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眼トキソプラズマ症のOCT所見

眼トキソプラズマ症はトキソプラズマ原虫のタキゾイトtachyzoite(急増虫体、栄養体とも呼ばれる)https://meisha.info/archives/1049が、細胞内寄生して増殖するために、網膜の神経細胞が壊死する病態で、急性期には硝子体混濁や周囲の網膜血管炎などの炎症反応を生じます。
先天性と後天性の2つの病型があります。

先天性トキソプラズマ症

先天性トキソプラズマ症では、初感染の妊婦の胎盤を通過したタキゾイトが、未熟な免疫状態の胎児の細胞内で増殖して、妊娠3カ月未満であれば流産になり、それ以後であれば脳や網膜に重い障害を残します。
通常両眼性で、黒褐色の網膜色素上皮細胞の増殖と灰白色のグリア増殖から成る境界明瞭な陳旧性瘢痕病巣が黄斑部に観察されます。
蕪城俊克:眼トキソプラズマ症. 臨床眼科 70:248-53.2016
OCTでは委縮した病変部の網膜全層が欠如します(白矢印の間)

後天性眼トキソプラズマ症

後天性眼トキソプラズマ症は通常片眼性で、硝子体混濁を伴う白色の境界不明瞭な網膜混濁です。
黄斑部に限らず、視神経乳頭周囲など後極網膜にみられます。
フルオレセイン蛍光眼底造影写真では中央が低蛍光、周囲が過蛍光のblack centerと呼ばれる変化がみられます。
https://meisha.info/archives/1041
OCTでは
1. 硝子体内細胞と硝子体膜の肥厚(白矢印)
2. 層構造が破壊された神経網膜の高反射の肥厚(黒★)
3. 下層の脈絡膜の低反射の肥厚(☆)
などが特徴です。
Ammar F et al.: Spectral optical coherence tomography findings in patients with ocular toxoplasmosis: A case series study. Ann Med Surg (Lond) 54:125-8.2020

このような変化は先天性トキソプラズマ症の再発病変(嬢病巣)として、瘢痕病巣周囲にみられることもあります。

ウィルス性網膜炎との類似性

活動性病変での白濁する眼底像と網膜の層構造が不明瞭な高反射を示すOCT像、またその結果瘢痕期に網膜が菲薄化するOCT像を示す点は、CMVやVZVによるウィルス性網膜炎に類似します。
原虫とウィルスの違いはありますが、ともに網膜の神経細胞内で病原体が増殖してその細胞を壊死させるという両者に共通する病態に由来するのでしょうか?