寄生虫は原虫protozoaと蠕虫helminthに大別されます。
原虫は単細胞で蠕虫は多細胞ですが、いずれも真核生物で原核生物の細菌とは異なります。
蠕虫による眼感染症にはイヌ回虫やネコ回虫の幼虫移行症であるトキソカラ症https://meisha.info/archives/1041や、回旋糸状虫によるオンコセルカ症https://meisha.info/archives/1031があります。
原虫による眼感染症で最も重要なのがトキソプラズマ症https://meisha.info/archives/1059です。
トキソプラズマ原虫は5-7μmの半月ないし三日月形の細胞で、ネコ、ヒト、家畜、鳥など多くの温血動物の、ほぼすべての臓器の細胞内に寄生できます。
宿主の細胞内で5-8時間毎に2分裂で増殖する活動性の原虫は、タキゾイトtachyzoite(急増虫体、栄養型)と呼ばれます。
しかし生体の免疫系による防御作用に会うと、壁の内部に多数の原虫を包含する組織シスト(あるいは単にシスト)に移行します。
組織シスト内の原虫はブラディゾイトbradyzoite(緩増虫体)と呼ばれ増殖は非常にゆっくりです。
ヒトやブタなどの中間宿主内ではトキソプラズマ原虫は、細胞内で増殖するタキゾイト、または組織シスト内でおとなしくしているブラディゾイトのいずれかの形で存在します。
一方、終宿主であるネコの腸管上皮細胞内では雌雄に分化した原虫が有性生殖でオーシストoocystを形成し糞便中に排出します。
オーシストは1個あたり8匹のスポロゾイトを含みます。
オーシストは乾燥や熱など外界の環境に抵抗性があり、土壌や水に含まれた状態で中間宿主やネコへの感染原因になります。
組織シストは外界には存在しません。
ヒトへの感染は、手についたネコ糞便中のオーシストを経口摂取する場合と、ブタなどの生肉食によってその体内の組織シストを摂取する場合があります。
免疫機能が正常なヒトではトキソプラズマに感染しても、多くは組織シストを保有するだけで無症状の不顕性感染です。
感染の有無は酵素免疫測定法(EIA, ELISA)などの抗体検査でわかります。
宮崎県での妊婦において調べられた抗体保有率は約10%でした。
Sakikawa M et al.: Anti-Toxoplasma antibody prevalence, primary infection rate, and risk factors in a study of toxoplasmosis in 4,466 pregnant women in Japan. Clin Vaccine Immunol 19:365-7.2012