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慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)

以前に眼瞼下垂の原因別分類として下の表を示しました。https://meisha.info/archives/1083
このうち外眼筋ミオパチーとして掲載したCPEOは両目の眼瞼下垂が徐々に進行する病気で慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO: Chronic progressive external ophthalmoplegia)と呼ばれます。

眼瞼下垂の原因分類

全外眼筋麻痺

CPEOでは眼瞼下垂だけでなく、眼球運動に関わる4直筋と2斜筋の麻痺も徐々に進行します。
そのため左右眼とも全方向の眼球運動が障害され、全外眼筋麻痺の状態となります。
この例ではほぼ正位ですが、多くの例で眼位は上のカラー写真のように外斜視となります。
しかし徐々に進行するためか複視を訴えることはあまりありません。

ミトコンドリア病

原因はミトコンドリアの遺伝子異常です。
筋を生検すると、変性して巨大化した異常なミトコンドリアが筋線維周囲に赤く染まるragged-red fiberの所見がみられます。
大平明彦: 外眼筋ミオパチー. In: 三村治 & 谷原秀信 (Eds): 知っておきたい神経眼科診療. 医学書院, 267-272, 2016.

Kearns-Sayer症候群(KSS)

ミトコンドリアは細胞に必要なエネルギーを供給するので、大量のエネルギーを必要とする骨格筋、心筋、中枢神経の障害を示す傾向があります。
CPEOに心筋障害を伴い、網膜変性を示す場合はKearns-Sayer症候群(KSS)と呼ばれ、CPEOの重症型と考えられています。

ただし、KSSの網膜変性は骨小体状の色素沈着を伴う典型的な網膜色素変性https://meisha.info/archives/726とは異なり、視野障害やERG振幅の低下は目立ちません。
網膜色素上皮のびまん性の障害がフルオレセイン蛍光眼底造影写真で顆粒状の過蛍光像として確認できます。

治療

眼瞼下垂に対しては挙筋短縮術前頭筋吊り上げ術で対応します。