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マドックスMaddoxダブルロッドテスト

複視で多いのは同側性複視交差性複視https://meisha.info/archives/365水平複視です。
それ以外に垂直方向にズレる上下複視や、回旋複視https://meisha.info/archives/1756があります。

複視の症状は[片目だと一つだが、両目だと物が二つにズレて見える]と言われます。
水平複視、垂直複視、回旋複視のいずれであっても、見ようとする対象物だけのズレではなく、左右眼の視野内の景色すべて図のようにズレて重なって見えます。
ただし実際には3種類の複視が複合して生じることが少なくありません。

患者さんから症状を聴取する際に、私は壁の時計がどのようにズレて見えるか尋ねます。
しかし左右眼の像が図のように見えた場合、右目の像が右でやや上方にずれていることは答えますが、反時計回りに回転していることまで答えてくれる患者さんはあまりいません。

左右あるいは上下のズレの認識は比較的容易ですが、回旋ズレには気づきにくいようです。
ちなみに上の図の複視は右眼の外転不全による同側性複視で、L/R(右下斜視)かつ右眼の外方回旋偏位の場合の複視です。
複視の像は視線の向きと逆方向https://meisha.info/archives/365の原理で考えれば、眼位ズレの方向を理解できます。
さて回旋複視の有無と程度を調べるには赤と白のマドックス杆を使うマドックスダブルロッドテストが便利です。

マドックス杆

マドックス杆は細い円柱のガラスが平行に並んだもので、検眼枠にセットして遠くの光源を観察すると、杆のスジに垂直な方向の光の線が見えます。

マドックスダブルロッドテスト

右目に赤、左目に白のマドックス杆を装着して見るとそれぞれ白と赤の線条が見えます。
2本が重なるか、あるいは水平、垂直にズレても平行であれば回旋複視はありません。(図の左欄
回旋複視の場合は平行ではなくどちらかが傾きます。
像が内方回旋の傾き(赤の右目像が左下がり、あるいは白の左目像が右下がり)であれば、どちらかあるいは両目が外方回旋偏位しています(図の中央)。
像が外方回旋の傾きであれば、どちらかあるいは両目が内方回旋偏位しています(図の右欄)。

線だけが見えて背景の景色が見えないので判断は容易です。
線が平行でない場合は平行になるまでマドックス杆を回転させます。
その際の回転角度が回旋斜視角になります。
山田裕子: Maddox杆ダブルロッドテスト. In: 根木昭 (Eds): 眼科検査ガイド 第2版. 文光堂, 160-161, 2016.
しかし1度刻みでの読み取りは困難なので、正確にはシノプトの眼位検査https://meisha.info/archives/1756の値を利用することになります。