網膜に穴(裂孔)があいて、そこから網膜が剥がれる裂孔原性網膜剝離https://meisha.info/archives/856は、放置すれば失明する重篤な病気です。
治療は手術(網膜復位術)で毎年120例程度手術を行っている山梨大学病院では、毎週2-3人の緊急入院、緊急手術が行われています。
松本瑞紀, 飯島裕幸: 裂孔原性網膜剝離の男性比率、山梨大学医学部附属病院17年間の手術統計から. 眼科 62: 701-708, 2020.
網膜復位術の目的は原因の網膜裂孔を塞いで、水の流入をストップさせることです。
剥がれた網膜の下には流れ込んだ液化硝子体が網膜下液として貯留しますが、裂孔さえ閉じて新たな水の流入がなければ、自然に吸収されます。
裂孔を閉鎖する術式には強膜バックリング術と硝子体手術(ビトレクトミー)があります。
眼球の外からバックルと呼ばれるシリコンなどの医療材料を締め込んで眼球内部に土手を作り、その上に網膜裂孔を載せて、裂孔周囲を冷凍凝固などで瘢痕癒着させる方法です。
その際に網膜下液は強膜、脈絡膜を切開して眼球外に排出します。
硝子体ゲルの液化が進んでいない若い患者に対して主に行われる手術です。
一方、硝子体液化が進行している高齢者に対しては硝子体手術が選択されます。
通常、白内障に対するPEA/IOL手術https://meisha.info/archives/761を同時に行います。
まず硝子体カッターで硝子体ゲルを除去して眼球内を人工房水に置き換えます。
次いでその房水を空気に全置換して、剥離した網膜を眼球壁に押し付けます(液空気置換)。
眼球壁に押し付けられた裂孔周囲の網膜を眼内レーザーで凝固して、網膜下に水が潜り込まないよう瘢痕癒着させます。
最後に空気を長期間滞留性ガスに置き換えて、術後は裂孔にガスが当たる体位をとってもらいます。