• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

斜視の眼底検査

乳幼児では重篤で器質的な先天性の眼疾患が斜視の原因になっていることがあります。
そのため[斜視を主訴として受診した小児に対し、初診時に必ず鑑別すべき疾患は器質疾患である]とも記載されています。
仁科幸子: 斜視. In: 東範行 (Eds): 小児眼科学. 三輪書店, 123-158, 2015.
ベッド上に押さえつけ泣き叫ぶ乳児に開瞼器をかけて行う検査は気がひけます。
しかし眼位や固視の観察後、散瞳して行う手持ち細隙灯顕微鏡検査や眼底検査は、斜視で初診した乳児では必須です。

内斜視眼にみられた網膜ひだ

図は生後5カ月の女児で右目の内斜視と眼振で紹介されました。
初診時に眼底検査を行ったところ右目の網膜ひだhttps://meisha.info/archives/1239が発見されました。

その後3歳時に測定できた矯正視力は0.02/0.2で、12歳時に超広角眼底カメラで撮影した眼底写真では、右目の黄斑は網膜ひだに巻き込まれ隆起していました。
左目の黄斑も耳側に牽引されていますが視力に与える影響は右よりは軽そうです。

家族歴ははっきりしませんが、家族性滲出性硝子体網膜症FEVRとしてフォロー中です。
初診時の内斜視は右目の低視力が原因だったと考えられます。
視力不良の目は成人では通常、外斜視になりますが、生後半年以内の発症では内斜視になることが多いようです。

斜視で受診する網膜芽細胞腫

網膜芽細胞腫https://meisha.info/archives/1265白色瞳孔が有名です。
しかし斜視を初発症状として受診する網膜芽細胞腫も15%程度あるとされています。
東範行, 網膜芽細胞腫全国登録委員会: 網膜芽細胞腫全国登録. あたらしい眼科 38: 151-158, 2021.
発見が遅れると生命に影響する網膜芽細胞腫がまぎれていることもある斜視患者の初診時の眼底検査はやはり重要です。