頭位異常の種類として、頭部傾斜head tilt、顔回しface turn、顎上げ/引きchin up/downがあります。
これらは三次元空間内の顔の向きのことで、前後、垂直、水平の直交する3本の軸周囲の頭部の回転運動で生じます。https://meisha.info/archives/2696
眼球運動も実は3本の軸の周りの回転運動です。
右の方をチラ見する右方視の際の目の動きは、眼球中央を通る垂直軸の周りの回転で、右目は外転、左目は内転と呼ばれます。
外転する右目では角膜は外に向かいますが、視神経の付け根部分は内に寄ります。
上目使いする上方視で両目とも上転するのは、眼球中央を通る水平軸の周りの回転で、角膜は上方を向き、視神経の付け根は下降します。
眼球全体が上昇する訳ではありません。
垂直軸回りの内転/外転、水平軸回りの上転/下転に続く3つ目の軸は前後軸です。
前後軸周囲の眼球の回転運動はピンときませんが、内方回旋、外方回旋と呼ばれます。
この眼球運動は上斜筋https://meisha.info/archives/2115が麻痺する滑車神経麻痺https://meisha.info/archives/2404や先天上斜筋麻痺https://meisha.info/archives/2121の理解に重要です。
角膜(前方)と視神経(後方)によって眼球の前後は区別できますが、眼球の上下(天地)と左右(耳側鼻側)を示す目印はありません。
そのため前後軸のまわりに眼球が回旋していることを、前方から見た絵で示すことは困難です。
そこで黒目の12時方向に虹彩切除がなされている目を使って、前後軸周囲の回転を示すことにしました。
図のように真っすぐな位置から左に30度顔を傾けると、目は反射的に逆方向に動いて、角膜中央と12時を結ぶ線が垂直になるよう眼球が回転します。
この時の右目の動きは12時方向が外方に回転するので外方回旋と呼ばれ、左目は内方に回転するので内方回旋と呼ばれます。
外方回旋で働く主な筋は下斜筋ですが下直筋にも外方回旋作用があります。
内方回旋で働く主な筋は上斜筋で、上直筋にも内方回旋作用があります。
右目の外転と左目の内転は右方視の際に意識的にできます。
両目の上転あるいは下転は上方視または下方視の際にやはり意識的にできます。
それに対して内方回旋や外方回旋は意識的には行えません。
顔を傾けた際に反射的に起こる不随意の眼球運動で、そのため内/外/上/下転の眼球運動は検査できますが、内方回旋と外方回旋の検査はできません。