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乳児血管腫

まぶたの赤あざ

生れて間もない乳児に見られる赤あざhttps://www.dermatol.or.jp/qa/qa21/q12.htmlイチゴ状血管腫https://www.dermatol.or.jp/qa/qa21/q15.htmlと呼ばれてきました。
これは毛細血管の壁を作る内皮細胞が腫瘍性に増殖するもので、現在は乳児血管腫と呼ばれます。https://jsprs.or.jp/general/disease/umaretsuki/hifu/kekkanshu.html

乳児血管腫と単純性血管腫

従来、血管腫とされてきた病態には混乱があり、これに対して国際血管腫・血管奇形学会(International Society for the Study of Vascular Anomalies: ISSVA)は脈管性腫瘍vascular tumorと脈管奇形vascular malformationに大きく分類しました。https://www.issva.org/UserFiles/file/ISSVA-Classification-2018.pdf
ISSVA分類では、乳児血管腫は脈管性腫瘍に分類され、従来、単純性血管腫(ポートワイン母斑)https://www.dermatol.or.jp/qa/qa21/q14.htmlと呼ばれたものは脈管奇形に属する毛細血管奇形とされます。

乳児血管腫

乳児血管腫は全身の皮膚や内臓に見られ、眼科領域ではまぶたに発生します。
生後、急速に増大して半年くらいでピークに達した後、5歳くらいまでに自然消退します。
田邉美香: 乳児血管腫の病態と治療. あたらしい眼科 36: 1427-1428, 2019.
この時期が視覚の感受性期間https://meisha.info/archives/2673に一致するため、大きい乳児血管腫では形態覚遮断弱視https://meisha.info/archives/515に注意が必要です。

表在型と深在型

まぶたにできる乳児血管腫には表在型superficial type(局面型)と深在型deep type(皮下型)があり、両者は見た目が大きく異なります。
表在型は本記事最初の写真のようにまぶたの表面に赤く盛り上がりますが、深在型は皮下に存在するため青黒く見えます。
図は生後2.5カ月の女児で、生まれたときにはなんともなかった左のまぶたが、最近腫れてきたとして受診しました。
造影CTでは眼窩に広がる病変で乳児血管腫と診断しました。
現在第一選択治療となったβ遮断剤の内服治療を皮膚科にて行い、まぶたの腫脹は軽快しつつあります。
田邉美香: 眼瞼・結膜乳児血管腫に対するβ遮断薬による治療 【眼腫瘍に対する非観血的治療】. 眼科 62: 931-935, 2020.