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小児の白内障

白内障は目の中の透明なレンズである水晶体が濁る高齢者に多い目の病気です。https://meisha.info/archives/48
高齢者の白内障は、現在では比較的容易に手術できてhttps://meisha.info/archives/793良好な視力を回復できます。

小児の白内障と形態覚遮断弱視

まれではありますが、子供にも白内障がみられることがあります。
しかし子どもの場合、手術が無事成功しても1.0の正常矯正視力が得られるとは限りません。
視力の発達時期である幼小児期の白内障は形態覚遮断弱視https://meisha.info/archives/515によって、視力の発達を高度に障害するためです。

視覚感受性期間

小児の白内障で視覚刺激遮断弱視とも呼ばれる形態覚遮断弱視を生じるのは、視力の発達に重要な視覚感受性期間の存在のためです。
この期間に網膜像が遮断されたり像が不鮮明だったりすると、低視力の状態で視力発達が停止するため、その目は弱視になります。

視覚感受性期間の時期とその間の感受性の強さについて正確な評価はできていませんが、凡そ1歳半くらいにピークがある粟屋の図が広く信じられています。
粟屋忍: 形態覚遮断弱視. 日本眼科学会雑誌 91: 519-544, 1987.

先天白内障と発達白内障

小児期にみられる白内障のうち生下時から混濁のあるものは先天白内障と呼ばれます。
これに対して生後に混濁を生じるものは発達白内障と呼ばれます。
上図のように生直後の視覚感受性は高くはありませんが、先天白内障による視覚刺激遮断の影響は大きいため、良好な視力を獲得するための手術時期のタイムリミット(臨界期)は、片眼性の先天白内障では生後4-6週以内両眼性であっても6-10週以内とされています。
白井久美, 田中三知子: 小児白内障手術の現状. 眼科 61: 501-504, 2019.

生後3カ月以後に発見される小児白内障

生下時には目の異常に気付かれず、生後3カ月以後に片目あるいは両目の白内障が発見された場合、対応は分かれます。
先天性だと判断された場合、片眼性では手術はすすめません
手術がうまくいっても形態覚遮断弱視のために視力が改善しないと判断されるためです。
両眼性であれば、白内障の程度に応じて手術時期を決めることになります。
一方、発達白内障だと判断すれば、早期に手術を行い、術後に健眼遮閉など弱視治療を行うことになります。
黒坂大次郎: 小児白内障のDos and Don’ts  知っておきたい小児眼科の最新知識 臨床眼科 69: 614-617, 2015.