OCTで黄斑部の断面を観察すると網膜の視細胞を支える網膜色素上皮 (RPE) 細胞のラインが、後方に突出して、脈絡膜に窪みを生じているように見えることがありFCE:focal choroidal excavationと呼ばれます。
上の図のFCEでは陥凹したRPEの窪み内に視細胞を表すEZのラインもはまり込んで、両者が接して間に空隙が存在しません。
このタイプのFCEはConforming typeと呼ばれます。
一方、下図は59歳の男性の右目で偶然に発見されたFCEです。
陥凹したRPEとEZの間にスペースが見られ、網膜下液の貯留を示す滲出型加齢黄斑変性https://meisha.info/archives/119ではないかとして紹介されました。
軽度のゆがみは自覚できましたが、矯正視力は1.2で、脈絡膜新生血管を示唆する所見はみられません。
これはNon-conforming typeと呼ばれるFCEのもう一つのタイプです。
弯曲したRPEと視細胞の間に液が貯留する傾斜乳頭症候群(TDS: Tilted disc syndrome) https://meisha.info/archives/1452に類似しています。
先天性と考えられるFCEもありますが、多くのFCEは脈絡膜の病気に伴って後天性に生じると考えられています。
PIC: punctate inner choroidopathyなどの脈絡膜の炎症によって生じた瘢痕組織の収縮が強膜側へのRPEの牽引を生じる病態が報告されています。
それ以外にもpachychoroid spectrum diseaseに属する中心性漿液性脈絡網膜症CSCやポリープ状脈絡膜血管症PCVなど種々の脈絡膜の病気に伴ってみられます。
Verma S et al. Focal choroidal excavation: review of literature. Br J Ophthalmol 2021;105:1043-1048.
FCEのみでは視力や視野障害に与える影響はわずかで、病変も安定していることが多く、特別の治療は必要ありません。
上に示した2例も治療は行わず、経過を観察していますが、状況の変化はありません。