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加齢黄斑変性に対する抗VEGF薬の適応

抗VEGF薬治療

抗VEGF薬の硝子体注射血管新生を伴う加齢黄斑変性 nAMD網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫 RVOME糖尿病網膜症による黄斑浮腫 DMEに対して主に行われています。https://meisha.info/archives/3153
注:従来多用されてきた滲出型AMD (exudative AMD)には抗VEGF薬治療の対象にならない非血管性PED(網膜色素上皮剥離)https://meisha.info/archives/1219や陳旧病変である線維性瘢痕も含まれるため、代わってnAMD: neovascular age related macular degenerationを使用することが奨励されています。
柳靖雄: 新しい滲出型カロ齢黄斑変性の分類と用語. 眼科 64:633-45.2022
現在でもポピュラーなラニビズマブ(ルセンティス)がnAMDに対して日本で最初に使えるようになった2009年当時https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/200904/510165.htmlは、抗VEGF薬は一部施設だけで使用されていました。
しかし講演会などの普及活動の結果、現在では大学病院や総合病院の眼科にとどまらず、多くの個人の眼科診療所でも注射が行われています。

nAMDの抗VEGF薬治療適応

nAMDに対する抗VEGF薬硝子体注射の手技自体は難しいものではありません。
しかしどのような目に対して治療を行うかの判断は簡単ではありません。
治療の前に以下の3点の確認が重要です。
1. 診断がnAMDで間違いないこと
2. 活動性があること
3. 中心窩を含む黄斑部の視細胞がまだ残存していること

1. nAMDの診断

黄斑部に出血や浮腫がある黄斑分枝BRVO網膜細動脈瘤黄斑部毛細血管拡張症Mac-TelなどはnAMDと紛らわしいことがあります。
このような病気でも抗VEGF薬硝子体注射によって浮腫は軽減しますが、原因は新生血管ではないので効果は限定的です。
正しい診断にはOCT検査だけでなくFA/IAが必要です。

2. 活動性があること

抗VEGF薬はnAMDの黄斑部の新生血管を退縮させることが主目的です。
すでに新生血管が線維性結合組織に置き換わった瘢痕期のnAMDでは抗VEGF薬の効果はありません。

3.黄斑部の視細胞の残存

nAMD治療の最終目標は黄斑部の視細胞を守って視機能を維持することです。
まだ活動性のあるnAMDの目であっても、大きな中心絶対暗点になっている場合は黄斑部視細胞はすでに死滅して回復は困難なので治療のメリットはあまりありません。