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ミドリンPアレルギー

散瞳検査にはミドリンP、ミドリンM、ネオシネジン、サイプレジンなどの点眼薬が使用されます。
このうちミドリンPが最も一般的です。
ミドリンP点眼液は商品名で、一般名はトロピカミド・フェニレフリン塩酸塩液です。
後発品として、ミドレフリンP点眼液、オフミック点眼液、サンドールP点眼液などがあります。
これらの薬剤の点眼後に、結膜の充血浮腫や眼瞼の発赤腫脹がみられて痒みを訴える場合、ミドリンPアレルギーと診断されます。

ミドリンPの成分

ミドリンPには以下の2種類の薬剤がともに0.5%の濃度(5mg/ml)で含まれています。
トロピカミド副交感神経をブロックして瞳孔括約筋https://meisha.info/archives/452を一時的に麻痺させます。
フェニレフリン交感神経α1受容体を刺激して瞳孔散大筋https://meisha.info/archives/2939を収縮させます。
さらに添加剤としてホウ酸、イプシロン-アミノカプロン酸、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなどが含まれます。

ミドリンPアレルギーのアレルゲン

ミドリンPに含まれる塩酸フェニレフリンの濃度は0.5%ですが、10%とより高濃度の単剤点眼薬による眼瞼の接触性皮膚炎の報告は皮膚科領域で多く報告されています。
Madsen JT, Andersen KE: Phenylephrine is a frequent cause of periorbital allergic contact dermatitis. Contact Dermatitis 73:64-5.2015
このことからミドリンPアレルギーを引き起こすアレルゲンはフェニレフリンと考えられます。
ミドリンPアレルギーの既往のある患者さんの次回の散瞳には、塩酸フェニレフリンではなく、フェニレフリンを含まないミドリンMを使用することになります。
多数例で調査した報告によると、ミドリンPアレルギーの発症は点眼回数が増加する高齢者に多いとされています。
武井一夫ほか: 散瞳剤点眼による外眼部炎の発症頻度.. 眼臨紀 9:563-7.2016
その理由として発症には多数回の点眼による感作の必要性が疑われています。

症例

眼底検査を受けた88歳の女性が、翌日から両眼の結膜充血と浮腫がみられ、1週間たってもおさまらないとして受診しました。

病歴の記載では1年前にも散瞳検査を受けていましたがその際は異常なしとのことです。
眼脂も少しあるというので眼脂培養も提出し、抗菌剤点眼とフルメトロン点眼を処方したところ、1週間後にはおさまっていました。
眼脂の培養結果は陰性でしたので、細菌性結膜炎ではなくミドリンPアレルギーだったと考えられました。
次回からはミドリンMを使用するようカルテに記載しました。