眼瞼下垂はさまざまな原因で生じます。https://meisha.info/archives/1083
高齢者にみられる眼瞼下垂の多くは腱膜性眼瞼下垂でhttps://meisha.info/archives/1610、横紋筋である眼瞼挙筋の腱膜の異常(菲薄化や断裂)で生じます。
一方、眼瞼挙筋につながる平滑筋の瞼板筋(ミュラー筋)の働きが弱まって生じる眼瞼下垂もあり、ホルネル症候群と呼ばれます。
ホルネル症候群の眼瞼下垂は上まぶたの瞼板筋を支配する交感神経の麻痺で生じます。
眼瞼下垂によって上まぶたの下縁と角膜反射の間の距離であるMRD https://meisha.info/archives/672が短くなり、二重まぶたの幅である重瞼幅は拡大します。
一方、瞼板筋は下まぶたにもある(上図参照)のでこれを引き下げる力が弱まり下眼瞼縁が上昇します。
上まぶたに起こる眼瞼下垂と下まぶたの縁の上昇で、上下のまぶたの間の隙間(瞼裂高)が狭まる所見は瞼裂狭小と呼ばれます。(下図の右目がホルネル症候群で瞼裂高は正常の左目で示してある)
また交感神経には虹彩裏面の瞳孔散大筋(上図)を収縮させて瞳孔を大きくする散瞳作用があり、これが麻痺するので瞳孔が小さくなる縮瞳を生じます。
暗室では正常側の瞳孔が大きくなるのに対して、ホルネル症候群の側の瞳孔は小さいままなので目立ちます。
交感神経は視床下部に始まり、3本のニューロン(中枢、節前、節後)を経由して目の瞼板筋や瞳孔散大筋に至ります。
ホルネル症候群はその長い経路のどこで交感神経が障害されても発症します。
原因として手術、血管性(内頸動脈解離)、外傷、腫瘍などさまざまです(原因不明のものも相当数あり特発性ホルネル症候群とされます)。
Sabbagh MA et sl. Causes of Horner Syndrome: A Study of 318 Patients. J Neuroophthalmol 2020;40:362-369.
中でも節前ニューロンは肺尖部を走行するため、肺癌の初発症状がホルネル症候群だったというエピソードは有名です。
ホルネル症候群をみた場合に原因を検索することは重要です。