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最強度近視での白内障手術

屈折が -6D以上の近視は強度近視と呼ばれます。https://meisha.info/archives/940
さらに -10Dを超えると最強度近視と呼ばれ、黄斑の異常や緑内障などの危険性が増します。

最強度近視の軽度白内障

メガネをかけても矯正視力が不良な中高年の最強度近視の患者さんでは、水晶体の濁りがわずかであっても、白内障手術を行うとフチ厚のメガネから術後解放されるので、多くの患者さんは喜んでくれます。https://meisha.info/archives/509
しかもメガネでは十分に矯正できなかった視力が、術後は期待以上に改善されることもよく経験されます。

症例:68歳女性

若い頃から近視が強く、メガネを常用していたAさんは、最近遠くがぼやけるとのことでメガネ店に行きました。
しかしこれ以上は度数を強くできないと言われ、また両眼での視力が0.7以上必要な免許更新の不安もあり、近医眼科を受診後、大学の眼科に紹介されました。

装用しているメガネを透してAさんの顔の輪郭赤矢印のように内向きの段差になるので、強度近視メガネであることは一目でわかります。
初診時の屈折と視力検査は下記のごとくでした。

矯正視力が0.4/0.6と低下している割には細隙灯顕微鏡で観察する水晶体の混濁はわずかです。
左眼の黄斑部には萎縮巣がみられますが、矢印で示す中心窩にはかかっていません。

白内障手術後

手術効果には限界があることも説明した上で白内障手術 PEA/IOLを計画しました。
眼軸長は30.09/29.65mm、軽度近視ねらいで+6.5/+8.0Dの眼内レンズを挿入しました。
術後の矯正視力は以下のごとく良好で、屋内では裸眼運転時は軽度近視メガネの装用で、生活は快適になり大いに満足していただきました。

矯正視力が0.4/0.6から1.2/1.2に改善した理由としては、メガネによる不完全な屈折矯正が是正された効果が大きいと思われます。
何よりも普段の生活でメガネから解放されたことがAさんにとって最大のメリットだったようです。