• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

視神経、頭蓋内疾患と誤診されるAZOOR

視力や視野の障害を訴えて受診する患者さんの眼底検査で異常がみられない場合、視神経あるいは頭蓋内視路の病気を疑います。https://meisha.info/archives/3109
例外は網膜視細胞の急性障害であるAZOORです。https://meisha.info/archives/3548

AZOOR診断のポイント

AZOORを疑うポイントは以下の4点です。
1. 光視症(患者さんは[光がチカチカ見える]という)
2. 視野障害部に対応するOCTのEZ異常
3. ERG(病変部の異常がみられる多局所ERGだけでなく、通常の全視野ERGでも振幅の低下がみられる)
4. 眼底自発蛍光(全例ではないが過蛍光を示して病巣の境界がわかるケースがある)
近藤峰生他: 急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の診断ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:443-9.2019
Fujiwara T et al: Fundus autofluorescence and optical coherence tomographic findings in acute zonal occult outer retinopathy. Retina 30:1206-16.2010

症例:42歳男性Mさん

最初の症状は左目の耳側視野のまぶしい感じでした。
A眼科で左目の視野異常を指摘されましたが眼底には異常なく、B脳外科病院での脳のMRI検査でも異常ありませんでした。
8か月後、今度は右目の鼻側視野がもよもやした感じがありC眼科を受診しました。
左目の耳側視野異常に加え、右目の鼻側視野にも異常がみられ、左同名半盲の疑いで再度B脳外科病院でMRI検査を受けましたが異常なしとされ、大学眼科を紹介されました。

大学病院での検査結果

両目の視力は1.2/1.2で、左視野はマ盲点が上下に弓状に広がる絶対暗点を示し、右視野の下鼻側30度付近にも弧状の暗点がみられました。
暗点の境界は垂直線に一致せず、また左右で範囲が異なることから頭蓋内視路異常の可能性は低いと考えられました。

右目の眼底自発蛍光では明らかな異常がみられませんが、発症後8カ月の左目では乳頭周囲に境界が比較的明瞭な過蛍光像がみられ(図上段右、黄矢印)、視野異常の範囲に一致しました。
また病変部位のOCTではEZの脱落図下段右、黄矢印)もみられています。
以上からまず左目、次いで右目に発症したAZOORと診断しました。