ハンフリー視野https://meisha.info/archives/867に代表される静的自動視野計は、MDスロープhttps://meisha.info/archives/874による進行速度評価など緑内障診療には不可欠ですが、網膜の病気の診療でも重要です。
飯島裕幸: Humphrey視野計でみる網膜疾患. 日本眼科学会雑誌 120:190-208.2016
AZOOR(エイゾール)は視野障害を主訴に眼科を訪れることで有名な網膜の病気です。
急性の発症で片目あるいは両目の見えにくさを訴え、視野検査は異常なのに眼底は一見正常な場合、視神経炎や虚血性視神経症を疑います。
しかしMRIで視神経病変が確認されず、OCTでEZの異常https://meisha.info/archives/735が見られるようならAZOORの可能性があります。
近藤峰生他: 急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の診断ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:443-9.2019
なお眼底が一見正常に見える網膜の病気には錐体ジストロフィhttps://meisha.info/archives/750、オカルト黄斑ジストロフィなどの網膜ジストロフィや癌関連網膜症などもありますが、これらは急性発症https://meisha.info/archives/2813ではなく緩徐進行性で両眼性の病気です。
67歳女性(AZOORは通常若年女性に好発しますが、2002年のGassの51例の下記論文での年齢分布は13-63歳でした)が1か月前に左眼の視野が急に狭くなったとして受診しました。
Gass JD et al: Acute zonal occult outer retinopathy: a long-term follow-up study. Am J Ophthalmol 134:329-39.2002
30-2ハンフリー視野は左眼で求心性狭窄を示しましたが(図中央)、眼底には異常がみられませんでした(図左)。
しかしERG検査で左眼の振幅が低下していた(図右)ためAZOORと診断されました。
その後、7年間の経過観察で視野障害の程度に大きな変化はみられませんが、初診時には検査機がなかった超広角眼底自発蛍光https://meisha.info/archives/3243撮影(図左)では鼻側周辺にまだらな低蛍光がみられ、OCTでは視神経乳頭耳側でEZの不明瞭化(図右下の黄矢印の間)が目立つようになっています。