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水疱性角膜症

角膜の構造

角膜は表面から上皮、ボウマン層Bowman layer、実質、デスメ膜Descemet membrane、内皮の5層構造をしています。
角膜内皮には角膜内皮細胞が単層で配列し、前房水の侵入を食い止めるバリア機能とわずかに染み込んだ水分を前房側に排出するポンプ機能によって角膜の膨潤を防いでいます。

角膜内皮細胞

角膜内皮細胞はヒトでは通常分裂増殖しません
そのため細胞が脱落した部位は周囲の細胞が拡大移動することでカバーされ、その結果内皮細胞密度は徐々に低下します。
ただし加齢による減少のみでは、100歳でも1mm2あたり2,000個を下回ることはないとされます。
一方加齢以外のさまざまな原因で角膜内皮細胞が過剰に失われて1mm2あたり500個以下になると、その結果拡大した内皮細胞はポンプ機能やバリア機能を代償できなくなり、前房水が角膜実質に染み込んできます。
これが水疱性角膜症です。

水疱性角膜症

水疱性角膜症になるとコラーゲン線維から成る角膜実質は膨潤して厚みが増しデスメ膜に皺が形成されます。
コラーゲン線維の層間に存在するデルマタン硫酸やケラタン硫酸などプ吸水性の高いロテオグリカンに水分が貯留すると、規則正しい線維配列が失われるため、角膜は混濁し矯正視力が低下します。
さらに角膜上皮基底層とボーマン層の間に貯留した水が水疱を形成するので水疱性角膜症という病名がついています。
清水俊輝, 加藤直子: 手術症例から学ぶCPC-水疱性角膜症. 眼科手術 35:252-6.2022
水疱は容易に破裂して上皮が欠損して知覚神経(三叉神経)が露出するため強い眼痛を生じます。https://meisha.info/archives/608

水疱性角膜症の原因

原因疾患としてFuchs角膜内皮ジストロフィなどの遺伝病やサイトメガロウィルス角膜内皮炎などの炎症のほか、医原性の原因として白内障など眼内手術やレーザー虹彩切開術https://meisha.info/archives/2058などがあります。
木下茂 他: 角膜内皮障害の重症度分類. 日本眼科学会雑誌 118:81-3.2014