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病的近視と近視性黄斑症

近視はその程度によって弱度、中等度、強度に分類されます。https://meisha.info/archives/940
ただし強度近視であっても、適正なメガネやコンタクトレンズを使用して測定した矯正視力は通常、正常の1.0以上です。

失明リスクのある病的近視

しかし近視に伴って黄斑や視神経に異常を生じると、矯正視力が不良となり、病的近視 PM: pathologic myopiaと呼ばれます。
日本人の失明原因の1位は緑内障、2位は網膜色素変性、3位は糖尿病網膜症ですが、https://meisha.info/archives/3531これに続く、4位:黄斑変性、5位:脈絡膜網膜萎縮、6位:視神経萎縮の原因の多くは病的近視です。

病的近視の病態

失明に至ることもある病的近視の病態には、近視性黄斑症、近視性牽引黄斑症、それに緑内障も含む視神経障害が含まれ、共通する病変は後部ぶどう腫であるとされています。
大野京子: 病的近視の眼底病変. 日本眼科学会雑誌 126:661-73.2022
その関係は図のごとくです。

病的近視と近視性黄斑症

日本近視学会は病的近視を[屈折度数は問わず、びまん性脈絡膜萎縮以上の萎縮性変化(特に乳頭耳側)もしくは、後部ぶどう腫を有する状態]としています。https://www.myopiasociety.jp/general/about/pathological.html
ここで[びまん性脈絡膜萎縮]とは、近視性黄斑症の病期分類のカテゴリー2に該当します。(上の図参照

近視性黄斑症のカテゴリー

近視性黄斑症のカテゴリー0は近視性変化のないもの、カテゴリー1紋理眼底(または豹紋状眼底)tesselated fundusと呼ばれ、中心窩またはアーケード血管内に脈絡膜血管が明瞭に透見される状態です。
カテゴリー2から4までが病的近視に含まれ、2のびまん性萎縮は後極網膜の黄白色調の変化です。
3の限局性萎縮は中心窩を含まない境界明瞭な黄白色斑状の萎縮巣で、4の黄斑萎縮は中心窩を含む灰白色の萎縮巣です。
渡辺貴士: 近視性黄斑症全般 META-PM 臨床眼科 75:1512-6.2021

後部ぶどう腫

近視進行の主要なメカニズムは、眼球赤道部の強膜前後方向の伸展による眼軸の延長(軸性近視)です。https://meisha.info/archives/933
病的近視は眼球後極部の強膜が伸展して後部ぶどう腫を生じ、黄斑や視神経乳頭が変形する結果です。