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慢性 chronic 中心性漿液性脈絡網膜症 CSC

中心性漿液性脈絡網膜症CSC: central serous chorioretinopathyでは視細胞と網膜色素上皮RPEの間に網膜下液 SRF: subretinal fluidが貯留して漿液性網膜剥離 SRD: serous retinal detachmentを生じます。
CSCは現在では脈絡膜血管の異常が原因とされていて、SRFは脈絡膜血管由来の血漿成分が、RPEの脆弱部分を通って網膜下に流入した結果です。https://meisha.info/archives/1931

慢性CSC

通常、SRDは無治療で自然吸収されますが、SRDが遷延、再発、慢性化するケースがあります。
その状態が数年~数十年続くと、黄斑部の網膜外層の視細胞が萎縮菲薄化して不可逆性の視力低下と中心暗点を生じ、慢性(型)CSC (chr CSC)と呼ばれます。

急性型と慢性型

慢性CSCに対して通常のCSCである急性型(あるいはclassic type)では無治療でも、3か月程度でSRDは自然吸収されます。
これに対して慢性型ではSRDが遷延して発症後6カ月以上続きます。
寺尾信宏, 古泉英貴: 慢性中心性漿液性脈絡網膜症と黄斑萎縮. 眼科 61:1383-90.2019

慢性CSCの臨床的特徴

急性型のCSCと比較して、慢性CSCにみられる臨床的特徴を表に示します。
石龍鉄樹: 慢性型中心性漿液性脈絡網膜症. 眼科 60:57-64.2018

1. 数年~10年以上の再発既往

慢性CSCの患者は一般に高齢(50歳以上)で、1-2年ごとに再発を繰り返しています。
その結果、SRDがほとんどみられない時期に受診しても、不可逆性の中心視野障害のために矯正視力は不良です。

2. RPE萎縮による自発低蛍光

CSCでは眼底自発蛍光FAF撮影で、遷延する網膜下液が過蛍光を示しますがhttps://meisha.info/archives/3862、慢性CSCではRPE萎縮のためその内部に低蛍光部が広がります(下図左)
この低蛍光が川のように眼底下方に伸びる場合はatrophic tractと呼ばれます。

3. 多発漏出

急性CSCではフルオレセイン蛍光眼底造影検査 FAで時間とともに拡大する蛍光漏出点が確認されますが、慢性CSCでは軽微な漏出点が多発するケースが多くみられます(上図右)

4. 網膜菲薄化

遷延するSRDのために光干渉断層計OCTでは、剥離した網膜下面の視細胞外節がつらら状に延長したり、これが脱落したりする像が観察されます(下図左)
さらに視細胞萎縮のために外顆粒層が菲薄化します(下図右)

5. タイプ1黄斑新生血管MNV

慢性CSCの中には、丈の低い網膜色素上皮剥離PED: pigment epithelial detachmentがみられることがあります。
OCTAやIAでその内部に新生血管が確認されれば、pachychoroid neovasculopathyと呼ばれます。
ただし多くは活動性が低く、網膜下出血を生じることはまれです。