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IgG4関連視神経症

IgG4関連眼疾患 IgG4-related ophthalmic disease: IgG4-ROD https://meisha.info/archives/2391
1. 画像検査(MRIなど)、
2. 病理組織所見(IgG4陽性形質細胞:>40% or >50個/HPF)、
3. 血清IgG4高値(>135mg/dl)
にて診断されます。https://meisha.info/archives/2398
後藤浩, 高比良雅之, 安積淳: IgG4関連眼疾患の診断基準. 日本眼科学会雑誌 120:365-8.2016
このうち1. の画像検査で腫瘤/腫大/肥厚を示す3大病変として涙腺、三叉神経、外眼筋があります。

機能障害

これら3病変では眼瞼腫脹や眼球突出を生じるものの、機能的な障害は比較的少ないとされています。
高比良雅之: IgG4関連眼疾患の臨床像. 眼科 60:459-65.2018
すなわち涙腺が腫大しても涙液分泌機能は比較的よく保たれ、ドライアイ症状はまれです。
また外眼筋腫大に伴う眼球運動障害で複視を訴える症例はありますが少数です。
三叉神経第2枝の眼窩下神経腫大 IONE: infraorbital nerve enlargement https://meisha.info/archives/2391は本症に特徴的ですが、そのために顔面の知覚鈍磨を訴えることはまれです。
曽我部由香: IgG4関連眼疾患としての三叉神経腫大. 眼科 60:467-72.2018

視神経障害

一方、視神経圧迫によって視神経が障害されるケースはIgG4関連視神経症と呼ばれ、治療が遅れると重篤な視機能障害を生じます。
高比良雅之: 眼窩の良性腫瘍・腫瘤性病変と神経眼科. 神経眼科 37:370-7.2020

症例

Aさんは60歳男性で、10年前から右眼の見えにくさを自覚していました。5年前に免許の視力検査で右眼は矯正で0.6でしたが、老眼のためと思い放置していました。
60歳になって眼科で右眼の視神経萎縮を指摘されて大学病院眼科を紹介されました。
RV = 0.02 (n.c.)
LV = 0.2 (1.2 X S-2.25D: C-1.25D Ax120)
視野検査にて右眼の高度の視野障害が示され、視神経乳頭は左眼に比べて蒼白、OCTでは神経線維層が菲薄化しています。

MRI検査ででは右眼の球後で下直筋と外直筋を巻き込む腫瘤が眼窩尖端部まで及んでいて、右視神経を長期間圧迫したことが視神経萎縮の原因と考えられました。
組織検査は行なえていませんが、血清IgG4値は1160mg/dlと著明に上昇しており、IgG4-ROD possibleと診断されました。