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結膜下注射と徐放効果

目への注射部位はさまざまです。https://meisha.info/archives/119
虹彩後癒着を起こしかけた前部ぶどう膜炎では、アトロピン点眼に加えて、デカドロンなどステロイドの結膜下注射が効果的です。https://meisha.info/archives/4326
結膜下に注射されたステロイドはどのような経路で眼内の炎症部位に働くのでしょうか?

結膜下注射の手技

結膜下注射は通常2.5mlあるいは5mlの注射筒に26あるいは27ゲージの針をつけて、眼球結膜と強膜の間の隙間に針を差し込み、薬剤を注入します。
注射された薬液によって結膜膨隆します。

注射によって結膜下に貯留した薬液の一部は、その下層の強膜のコラーゲン線維の間を通過して毛様体や虹彩に作用します(図の紫矢印)。
しかし大部分は注射によってできた結膜の針孔から徐々に外に漏れ出て、涙液に混じって角膜を経由して前房から虹彩や毛様体に作用します(図の水色矢印)。

このことはウサギの目で、結膜に穴をあけずに皮下から結膜下に達するルートで、アイソトープラベルされたハイドロコーチゾンを結膜下注射したコントロールとの比較実験で確認されました。
Havener WH. Ocular pharmacology, 2nd ed: CV Mosby; 12-23. 1970

徐放効果

涙液に溶けて作用するリンデロンのようなステロイド点眼薬は、涙のターンオーバーのために数分しか作用しません
長時間の作用を期待するには頻回点眼が必要ですが、結膜下注射されたデカドロン(リンデロンと同様の強力作用のステロイド)は針穴から徐々に漏れ出すので、頻回点眼と同等あるいはそれ以上の持続的な薬効を発揮します。
高血圧治療薬のアダラートCR錠は、経口投与された薬剤が長時間作用するよう製剤構造を工夫されていて徐放薬と呼ばれますが、結膜下注射は徐放効果を実現する薬剤投与法といえます。