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先天Brown症候群

子供の眼球が上下にズレる]と親が訴えて眼科を受診した場合、
交代性上斜位https://meisha.info/archives/2684
先天上斜筋麻痺https://meisha.info/archives/2121
下斜筋過動https://meisha.info/archives/3935
などに加えて、先天Brown症候群も考慮する必要があります。

Brown症候群

Brown症候群の臨床的な特徴は内転時の患眼の上転制限です。
Wilson ME, Eustis HS, Jr., Parks MM: Brown’s syndrome. Surv Ophthalmol 34:153-72.1989
これは下斜筋の麻痺(下斜筋の単独麻痺は実際には非常にまれですが)でも生じますが、眼球を他動的に動かす牽引試験forced duction test: FDTを行っても上転しない点が下斜筋麻痺とは異なります。

先天性VS後天性

Brown症候群は最初Harold Whaley Brownによって先天異常として報告されました。
その後、炎症(滑車及び周囲組織の炎症)や外傷(滑車の障害)、上斜筋手術後などさまざまな後天性要因でも発症するケースが報告されています。
Noorden GK, Campos EC. Brown syndrome. In: Binocular vision and ocular motility 6th ed Theory and management of strabismus: Mosby.466-71. 2002

症例1:7歳男児

2歳時から目の動きに左右差があることに両親が気づいていましたが日常生活に支障ありませんでした。
学校の視力検査でひっかかり、近医眼科を受診した際に裸眼視力は1.2/1.2でしたが、上下ズレの眼位異常を指摘されて大学眼科を紹介されました。
図の矢印のように右上方視で左眼の内上転が制限され、上下複視を自覚します。

症例2:3歳女児、症例1の妹

1歳時から右方視で上下ズレがあることに両親が気づいていました。
やはり右上方視時に左眼の内上転制限があり(図左矢印)経過観察を行いました。
7歳時に行うことができたヘスでも左眼の内上転制限が示されています(図右矢印)。

治療

Brown症候群の治療適応に関しては、患眼が内転する側方視で複視があったとしても、第一眼位で上下偏位がなく、目立つ頭位異常もなければ、積極的な治療はせずに経過観察するのが一般的な考え方です。
木村亜紀子: 紛らわしい斜視と複視 日本の眼科 85:915-20.2014
上記の同胞例でも正面視で問題がないため、特別の治療なしに経過観察しています。