症状が一時的でその後回復することを[一過性]と呼びます。https://www.nanbyou.or.jp/glossary/%E4%B8%80%E9%81%8E%E6%80%A7
[一過性の意識障害]や[一過性脳虚血発作]などはよく耳にします。
眼科を受診する患者さんで一時的に片目の視界が暗くなって失われる場合[一過性黒内障(発作)]と呼ばれます。
英語ではamaurosis fugax ですが、それ以外にTransient monocular visual loss (TMVL) として報告されることもあります。直訳すれば[一過性単眼性視覚喪失]ということになります。
その原因の多くは頸動脈狭窄や閉塞https://meisha.info/archives/4567で、内頸動脈の血管内にできるプラークと呼ばれる粥状物質が崩れた破片やプラーク表面の血栓が剥がれて流れ、血流にのって眼動脈や網膜中心動脈あるいはその枝に詰まり、一時的に血流がストップするためです。
多くは詰まった塞栓が砕けて流れ去り血流の回復によって再び見えるようになります。
一過性黒内障発作の症状は一時的な視野障害です。
その多くは、水平半盲altitudinal visual field defectの形をとります。
Bruno A et al.: Transient monocular visual loss patterns and associated vascular abnormalities. Stroke 21:34-9.1990
これは網膜中心動脈の枝が上/下、耳/鼻側に分かれ、罹患網膜部位に対応する形で視野欠損を生じるためと思われます。
網膜中心動脈本幹が閉塞する網膜中心動脈閉塞症CRAO https://meisha.info/archives/3687では視野全体の障害ですが、その枝が塞栓子で閉塞して症状が一過性ではなく永続する網膜動脈分枝閉塞症BRAOでは同様の水平半盲が視野検査で記録できます。
ただし眼動脈や網膜中心動脈本幹の一時的な閉塞であれば視野全体が障害されます。
先の論文ではTMVLの視野障害の形として水平半盲以外のパターンも記載されています。