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ガンマ角異常による[みための外斜視]

遮閉試験https://meisha.info/archives/478では眼球は動かず正位と判定されるのに、みためは外斜視のようにみえることがあり偽外斜視と呼ばれます。
その多くはガンマ角の異常が原因で、FEVR(家族性滲出性硝子体網膜症) https://meisha.info/archives/1239などでの黄斑耳側偏位で経験します。
黄斑偏位で中心窩が耳側に大きく移動すると、視軸に対して光軸が外方にズレるため角膜反射法では外斜視のようにみえます。

症例:54歳男性

図左の右目は内側の白目が広く、角膜反射法https://meisha.info/archives/473でもフラッシュ光が反射してできる白点は角膜内側にあり外斜視と判断されます。
しかし正面を向いている左目は褐色白内障で矯正視力は0.02しかなく、患者さんは裸眼視力でも0.6あるIOL眼の右目でものを見ています。
その右目が外を向く理由は図右のように中心窩のある黄斑が大きく耳側に偏位しているためです。

視軸と光軸のズレ:ガンマ角

視軸は固視目標と中心窩を結ぶ線で、光軸は角膜と水晶体という二つのレンズ中心を結ぶ直線にほぼ一致します。
黄斑偏位で眼球が外を向く理由を理解するには、視軸にほぼ一致する注視線と光軸のズレであるガンマ角の理解が必要です。
正常眼では光軸が視軸に対してわずかに外側にズレるので、ガンマ角は+3~+5度です。
中西裕子. 単眼性眼位検査.  眼科検査ガイド第3版.153-4. 2022

ガンマ角が大きい場合

わかりやすくするために、図左の正常の目ではガンマ角0度として、視軸(≒注視線)が光軸に一致しています。
図右は先に示した[みため外斜視]のケースで、固視している右目の中心窩が耳側に大きく偏位しています。
そのため正面に向かう視軸に対して光軸は外に大きくズレて、角膜反射は鼻側に寄っています。

眼球光学での定義

光軸:Purkinje-Sanson像の第1-4像を結ぶ線、すたなわち点光源でできる角膜前後面、水晶体前後面の反射点を結ぶ線
注視線:固視点と眼球の回旋点を結ぶ線
瞳孔中心線:瞳孔中心を通り角膜前面に垂直な線
照準線:固視点と瞳孔中心を結ぶ線
α(アルファ)角:視軸と光軸のなす角度
γ(ガンマ)角:注視線と光軸のなす角度
κ(カッパ)角:視軸と瞳孔中心線のなす角度
λ(ラムダ)角:照準線と瞳孔中心線のなす角度
シノプトでガンマ角を測定する際には実際にはラムダ角を測定しています。
矢ケ崎悌司. 斜視検査. 診療に役立た眼光学: 文光堂.86-9. 2001