甲状腺眼症の活動期[中等度~重症]での治療は免疫抑制療法です。https://meisha.info/archives/2540
本邦では[メチルプレドニゾロン1gの連続3日間投与+休薬4日]を3クール行うステロイドパルス療法(Daily法)が一般的で、通常3週間の入院加療になります(図の上段①)。
しかし重篤な肝副作用リスクを軽減するため、ヨーロッパではステロイド総投与量を8g以下にすべきという意見が強く、ステロイドパルス療法(Weekly法)が行われます(図の下段②)。
Bartalena L et al.: Eur Thyroid J 5:9-26.2016
ステロイドのWeekly pulse 療法は上図下段②のように本邦のガイドラインでも紹介されています。http://www.j-endo.jp/uploads/files/edu/koujyousengansyo_digest.pdf
具体的にはメチルプレドニゾロン0.5gの点滴を毎週1回6週間行い、その後の6週間は半量の0.25gとしてトータル12週で治療を終了します。
ステロイド内服の後療法は行いません。
Kahaly GJ et al: J Clin Endocrinol Metab 90:5234-40.2005
この治療法ではステロイドの総投与量を少なく抑えられるだけでなく、入院ではなく外来通院治療となる点が中年の勤労者には大きなメリットとなります。
Uさんは1年前に体重減少があり内科でバセドウ病の治療を開始してホルモンの値は正常化しましたが、上方視と下方視で上下複視を自覚したため大学眼科を紹介されました。
肉眼的には右眼の上下転がわずかに制限され(図左)、MRIの眼窩冠状断、脂肪抑制T2強調画像(図右、上段)https://meisha.info/archives/27にて右眼の上下直筋の腫大と浮腫(黄矢印)がみられました。
右眼に対してトリアムシノロンのテノン嚢下注射 STTAを行い症状は軽度改善しましたが、3か月後のMRI検査では左眼の下直筋と上直筋に新たな腫大と炎症が出現しました(上図右、下段、黄矢印)。
そこで12週間かけてメチルプレドニゾロン500/250のweekly pulse治療を開始しました。
治療後複視は消失して見え方の違和感もなくなり、抗TSH受容体抗体のTSAbの値(下図)も正常化しています。