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眼瞼下垂の検査:挙筋機能とBell現象

眼瞼下垂の程度は上まぶたの下縁と角膜中央(角膜反射の位置)との間の距離であるMRD: margin reflex distance https://meisha.info/archives/672で評価します。

眼瞼下垂の主な原因は、[動眼神経-眼瞼挙筋-挙筋腱膜]、または[交感神経-ミュラー筋]の経路のどこかにあります。
このうち眼瞼挙筋自体が関係する先天眼瞼下垂と挙筋腱膜の異常で生じる腱膜性(加齢性)眼瞼下垂https://meisha.info/archives/1610の鑑別には、眼瞼挙筋の収縮力である挙筋機能の評価が重要です。

挙筋機能

挙筋機能は下方視の状態から上方視した時に、上まぶた下縁が移動する距離で評価します。
具体的には図左のように下方視のまぶた下縁の位置にメジャーのゼロ目盛りを固定します(赤の点線の位置)
次に図右のように上方視をしてもらい、まぶた下縁が動いた距離(赤矢印)をミリ単位で測定します。

その際、メジャーが動かないよう注意するとともに、眉毛部分の皮膚を下の骨に押し当てて、前頭筋の力がまぶたに及ばないようにします。
挙筋機能が10ミリ以上あれは正常です。
加齢性の眼瞼下垂などに対する挙筋短縮術では、挙筋機能を参考にして短縮量を決めることがあります。
眼瞼挙筋が線維化して収縮力が低下している先天眼瞼下垂のうち、4ミリ未満の挙筋機能不良例に対しては通常、前頭筋吊り上げ術が選択されます。

Bell現象

多くの人ではまぶたを閉じると眼球が上転します。これはBell現象と呼ばれます。
Bell現象が陰性で閉瞼時に眼球が上転しない患者さん(図下段の陰性例は逆に眼球が下転する特殊例)の場合、過矯正の手術後、睡眠中に薄目を開く軽い兎眼状態となり、露出した角膜が乾燥して角膜潰瘍などの危険性が増します。
そこで手術前のBell現象が陰性の場合は手術を控えめに行うのが無難です。