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緑内障と眼圧

緑内障の特徴は視神経乳頭の陥凹拡大で、網膜神経節細胞の軸索である網膜神経線維が脱落した結果であることを前回説明しました。
https://meisha.info/archives/800
一方、緑内障の治療では眼圧を下げる目薬が使われ、患者さんは毎回、眼圧を測定します。
眼圧と緑内障はどのような関係があるのでしょうか?

角膜で測る眼圧が視神経乳頭に及ぶ

眼圧は角膜と強膜の壁でできた眼球というボールの内圧で、先端を切り落とした円錐形のチップ(圧平眼圧計:アプラネーショントノメータ)で角膜を押して測定されます。
眼球内部は流動性のある房水と硝子体で満たされていて、内圧の大きさはどこも同じです。
したがって、眼圧は視神経乳頭に加わる圧力を測定していることになります。

視神経乳頭は圧力に弱い

正常の目の眼圧は概ね10-20ミリメートル水銀柱です。
急性緑内障発作ではその圧が60を超えて、激しい目の痛みと頭痛に襲われます。
https://meisha.info/archives/452
24時間以内に救急外来にかかり適切に治療されると、通常眼圧は正常化して痛みはおさまり、視野変化を生じるような視神経の障害は残りません。
しかし不幸にして正しい診断と治療が遅れて、60を超える眼圧が2週間以上続くと、その後眼圧が正常化しても視神経は障害されたままで、失明またはそれに近い状態となり回復しません。
その場合、網膜や水晶体など眼球の他の部位はそれほど障害されないので、視神経乳頭は眼球の中で最も高眼圧に弱い組織と言えます。

眼圧上昇で視神経が障害される機序

高眼圧が持続した場合に、視神経乳頭を通過する網膜神経線維がどのようにして障害されて脱落するのかについては、昔から2つの説があって、いまだに決着していません。
1. 機械的圧迫説 (mechanical theory):網膜神経線維が通過する視神経乳頭の奥にある篩(ふるい)状の篩板が変形して、通過する神経線維が圧迫されることで障害される。
2. 循環障害説 (vascular theory):高眼圧によって視神経乳頭部で神経線維を栄養する血流が減少するために障害される。