複視を訴える患者さんの右目の前に赤ガラスを置いてペンライトの光を見てもらうと、右目の像は赤、左目の像は白で、左右の目の像のズレ具合を自覚できます。
赤ガラス法はこのようにして、左右の像のズレを9方向で記録するもので、どの方向を見た際に複視の像のズレが最大になるか、容易に確認できます。
石川弘: 複像検査(赤ガラス試験). In: 石川弘 (Eds): 神経眼科診療のてびき 第2版. 金原出版, 61-63, 2018.
図では左目の白の像が右目の赤の像より下方なので左上斜視です。
しかも右下方視でそのズレが最大になります。
あとは左への頭部傾斜でズレが大きくなればPaksの3段階法https://meisha.info/archives/2449によって左上斜筋麻痺と診断できます。
水平、垂直、回旋の複視https://meisha.info/archives/27は左右の眼球が向く視線のそれぞれ左右、上下、回旋のズレに対応します。
ペンライトによる通常の赤ガラス法では左右と上下のズレはわかりますが、回旋ズレはわかりません。
そこで前回、棒状光源を使用した赤ガラス法https://meisha.info/archives/2457を紹介しました。
ただし横長の棒状光源で傾きも含めて、上の図のように記載するのは煩雑です。
回旋ズレも含めた9方向眼位は、通常シノプト(大型弱視鏡:Synoptophore)を使用して検査します。
図には、3列3段で9方向の検査結果が示されています。
中央は正面視、左上は右上方視15度の結果です。
それぞれのますは3段になっていて、上から水平、上下、回旋偏位を示します。
中央ますの上段の+10°は内斜視、中段のL/R 2°は左上斜視、下段のex 10°は外方回旋偏位を意味します。
これは外傷性の滑車神経麻痺で左眼の障害>右眼の障害と考えられたケースです。
上斜筋が働く下方視で著明な外方回旋偏位を示しています。
上下ズレは障害の強い左上斜筋が内下転する右下方視で最大の5°(赤点線)です。