• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

マイボーム腺梗塞

マイボーム腺

上下のまぶたの中には瞼板と呼ばれる硬い板状の構造があり、その中には多数のマイボーム腺https://meisha.info/archives/703が通っています。
マイボーム腺から分泌される油は涙液層(膜)表面の油層https://meisha.info/archives/1172を形成します。
まぶたの縁を細隙灯顕微鏡で観察するとまつ毛(睫毛)の内側にマイボーム腺の開口部が多数の小さな窪みとして観察され、時に油滴が付着しています。

マイボーム腺梗塞

分泌された油が脱落した腺管上皮細胞とともに固形化すると開口部を塞いで、透明あるいは白色の突起物として観察され、マイボーム腺梗塞とよばれまます。
小幡 博. 眼瞼・結膜セミナー マイボーム腺梗塞. あたらしい眼科 2019;36:665-666.

似た外観で周囲の発赤と痛みを伴う内麦粒腫はマイボーム腺の感染で、切開排膿または抗菌薬点眼、内服で加療します。https://meisha.info/archives/596
それに対して通常無痛性のマイボーム腺梗塞は、小さければまぶたを温める温罨法をすすめる程度で治療は不要です。

マイボーム腺梗塞摘出術

ただし異物感を訴える、あるいは整容的目的の除去を希望する大きなマイボーム腺梗塞では、表面を切開して内容を排出するマイボーム腺梗塞摘出術(K213: 440点)を行います。
図は74歳の男性で痛みはないものの、右の上まぶたのできものをとってほしいと希望して受診しました(図左)
細隙灯顕微鏡下で21Gの針で切開したところ、少量の出血と練り歯磨き様の内容物が見えたので(図中央)、ベッドに移ってもらい手術用顕微鏡下で切開を広げて内容物を絞り出しました(図右)

マイボーム腺梗塞の名称

梗塞は広辞苑では以下の2つの意味があるとされます。
①ふさがって通じないこと。
②動脈が血栓などのためにふさがり、血液が流れなくなって、その動脈の支配する細胞・組織が壊死に陥る病変。心筋梗塞・脳梗塞など。
このうち②の意味にはinfarctionという医学用語が該当しますが、マイボーム腺の血流障害ではないので、Meibomian infarctionではなく、Meibomian concretion(マイボーム腺の結石、凝結物という意味)が相応しいとされます。
小幡 博. 眼瞼・結膜セミナー マイボーム腺梗塞. あたらしい眼科 2019;36:665-666.