[目ヤニが出る]というのは眼科を受診する患者さんに多い訴えのひとつです。
眼科診療所で[目ヤニが出る]と訴えると通常、抗菌薬の目薬が処方さます。
これは細菌性結膜炎あるいは涙嚢炎と診断されるためですが、目ヤニの原因は細菌感染だけでしょうか?
目ヤニは脂(あぶら)のようにベタベタするので眼脂(ガンシ)とも呼ばれますが、その主体はムチンと呼ばれる糖と蛋白から成る高分子(糖タンパク)です。https://www.nichigan.or.jp/public/disease/symptoms.html?catid=74
ムチンは粘膜表面を物理的に保護する粘液に含まれ、気道上皮から出る痰の主成分でもあります。
目では結膜上皮の杯細胞から分泌されて、涙を角膜表面に保持する役割を果たしています(膜型ムチン)。https://meisha.info/archives/620
一方、涙自体に含まれるムチン(分泌型ムチン)には新陳代謝によって日々脱落する角膜や結膜上皮、およびそれらの表面の異物をからめ取って排除する役割もあります。
したがって病気でない健康な目でも目ヤニは出ます。
特に起床時に少量付着する程度の目ヤニは病的とは言えません。
一方、片目にのみ多い目ヤニや、両目であっても日中気になるほどの量の目ヤニは、多くの場合、結膜炎https://meisha.info/archives/2498や涙嚢炎https://meisha.info/archives/2614が原因です。
そのため抗菌薬の目薬が処方されます。
しかし、細菌性以外の結膜炎、すなわちウィルス性結膜炎やアレルギー性結膜炎では抗菌目薬は効果がなく、目ヤニも減りません。
また仮に細菌性結膜炎であっても、耐性菌などのために処方された抗菌目薬が無効の場合もあります。
処方された抗菌目薬を点眼しても目ヤニが減らない場合、以下の可能性を考えて眼脂培養などを行うのがよいでしょう。
1. 生理的な目ヤニ
2. 抗菌薬に耐性の細菌性結膜炎
3. 細菌性以外の結膜炎