緑内障と網膜色素変性には多くの共通点があります。
両者ともに通常両眼性で、主要症状である視野障害は進行性です。
多くの患者さんで、矯正視力は末期まで正常です。
失われた視機能を回復する治療法は両者ともにまだありません。(緑内障に対して行われる眼圧降下治療はあくまで進行抑制が目的です。)
違いは死滅する網膜の細胞で、緑内障は網膜神経節細胞、網膜色素変性は視細胞です。
また診察にあたる眼科医の専門分野が緑内障と網膜内科という違いもあります。https://meisha.info/archives/3117
2015年に行われた日本の失明原因調査では、網膜色素変性は第2位となり、第1位の緑内障に次ぐ多さとなっています。
森實祐基: 視覚身体障害の全国調査. 眼科 32:265-72.2020
しかし両者の有病率には大きな違いがあり、40歳以上の緑内障有病率が5%であるのに対して、4,000-8,000人にひとりhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/196とされる網膜色素変性の有病率は0.1-0.25%です。
澤口昭一: 日本における緑内障疫学. あたらしい眼科 28:36-40.2011
そのためか、網膜色素変性患者が緑内障と誤診されたまま診療されるケースがみられます。
田辺友理子ほか: 緑内障と診断されていた網膜色素変性の2例. 眼科 57:67-75.2015
75歳女性Aさんは50歳くらいから緑内障の点眼治療を受けていました。
眼圧は良好にコントロールされていたにもかかわらず視野が進行するとのことで眼底検査を受けました。
眼底自発蛍光https://meisha.info/archives/726では両眼対称性にアーケード血管に沿う低蛍光が見られました。
OCT検査https://meisha.info/archives/735では視細胞を示すEZのラインが中心窩付近の狭い範囲以外では消失していて、網膜色素変性であることがわかりました。