• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

散瞳薬点眼による急性緑内障発作

眼底の病気の精査や白内障の詳しい観察のためには、点眼薬による散瞳検査が必要です。
その際、角膜裏面と水晶体前面が接近している浅前房眼や、周辺角膜裏面と虹彩前面が接近する狭隅角眼https://meisha.info/archives/3254では、散瞳によって眼圧が急上昇する急性緑内障発作APAC: Acute primary angle closure https://meisha.info/archives/826を生じることがあります。

APACは直ちに対応すれば回復する

APACでは頭痛や嘔吐など目以外の症状もみられますが、通常は激しい眼痛があって他眼を隠すとよく見えないので目の問題だと気づきます。
そして発症当日に眼科を受診して、高浸透圧剤の点滴など、適切な処置を受ければ回復します。
しかし感覚が鈍磨する高齢者では、眼痛がそれほどでもないためAPACであることに気づかず、放置したために失明に至ることがあります。

症例:81歳女性

白内障と糖尿病網膜症のチェックのために近くのB総合病院眼科を3カ月ごと定期通院していたAさんは、担当医が代わったため1年間ほど受診していませんでした。
最近両目とも見えにくくなり、久しぶりに受診して散瞳検査を受けたところ白内障の進行が原因だとして手術をすすめられました。
その帰宅途中で気分不快と頭痛があり帰宅後嘔吐したので、翌日近医内科を受診して点滴治療を受け、頭痛と嘔吐は改善しました。
しかし左目の充血が気になるとのことで3週間後B総合病院眼科を受診したところ、矯正視力は右0.5、左光覚弁で、眼圧は右18、左52mmHgで、左眼の急性緑内障発作APACとして大学病院に紹介されました。

図は大学病院初診時、すなわち左眼APAC発症後3週間の左眼の前眼部写真と両眼の前眼部OCT検査画像です。
左眼は中等度散瞳で、前房は極度に浅く、前眼部OCTでは左眼は全周隅角閉塞、右眼も狭隅角の状態です。
入院の上、緊急で水晶体摘出術を受けて眼圧は17mmHgに低下したものの、左視力は回復せず光覚弁のままでした。
残った右眼のAPAC予防を目的として3日後にPEA/IOL手術を行い、右視力は1.0に回復しました。

APACによる失明を回避できなかった理由

1年前まで、AさんはB病院で定期的に散瞳検査を受けて問題ありませんでした。
おそらく今回の受診までの間に狭隅角が進行していたのに、APACの注意を受けることなく散瞳検査をされたために、帰宅時の頭痛がAPACの症状であることに本人が気づきませんでした。
APACを発症しても当日のうちに適切な眼科対応ができれば救うことができたはずです。
狭隅角眼で散瞳によるAPACのリスクが予測される場合は、[眼痛や頭痛があって片目を隠してよく見えない場合はその日のうちに眼科に連絡する]という注意を徹底すべきです。https://meisha.info/archives/3277