見えにくさを訴える患者さんを診察する際に、所持メガネが適正であるかどうかをまずチェックすることは大切です。
所持メガネの度数をレンズメータで測定した上で、そのメガネでの視力と検眼レンズでの矯正視力を比較します。
Aさんは両目の白内障手術目的で紹介されましたが、それは最近処方されたメガネでもよく見えないことが理由です。
下図は遠用メガネ度数とそのメガネでの視力、および裸眼視力と検眼レンズでの矯正視力です。
白内障は両目とも軽度で、右目の矯正視力不良は分厚い黄斑前膜 ERM https://meisha.info/archives/1863のためと考えられました。
しかし左目には軽度の白内障以外に問題はなく、適正に矯正すれば0.7の視力なので、見えにくさの原因には遠視メガネの低矯正もかなり関与していると考えられました。
そこでまずはメガネを再処方してそれでも見えにくいようなら手術を検討する方針としました。
白内障などの器質的な病変のために矯正視力が低下する場合、この例のように不適切な度数のメガネを処方されていることは少なくありません。
実際の臨床では[所持メガネを常用しているか]どうかも重要な情報です。
常用していない場合、[どのような場面でメガネを掛けるのか]も確認します。
若年者でメガネを常用している多くは近視や近視性乱視です。
軽度の低矯正は問題ありませんが、過矯正は眼精疲労の原因になります。https://meisha.info/archives/259
またあまりに低矯正のために両眼でも0.5以下の低視力になっている場合や、不適切な乱視矯正(円柱レンズの軸の大幅なずれや過剰な円柱度数)の場合もメガネ再処方を検討します。
40代以上の近視メガネ常用者が[スマートフォンの文字が見えにくい]と訴える場合、多くは老視の始まりです。
-5Dくらいまでの近視であればメガネをはずすと楽に画面の文字が読めることを確認してもらい、累進屈折力レンズの遠近両用メガネhttps://meisha.info/archives/374を勧めます。
累進メガネへの慣れには年齢が関係するので、50代までにはスタートするのがよいです。
メガネを掛けていなくても、眼科を受診する高齢者の半数以上はメガネを所持しています。
普段は使用していないが、メガネは家にあるという患者さんでは、どのような場面でメガネをかけているのかを確認します。
眼科受診時にメガネを持参していれば、累進屈折力レンズかどうかを、図のようにレンズを通して見える直線のゆがみ具合で確認します。
本来常用すべき累進メガネを近くを見るときだけ掛けているケースもよく経験します。
若い時からメガネを掛け慣れている近視のヒトは老視年齢になっても累進メガネを適切に使いこなせますが、メガネを掛け慣れていない正視や遠視のヒトは処方された累進メガネを使いこなせないことがよくあります。https://meisha.info/archives/374
遠視眼で累進メガネを常用できていない場合は、単焦点の遠用と近用メガネを掛けかえることを勧めたほうがよい場合があります。