遠視の高齢者がクリアな網膜像を得るためには近用メガネだけでなく、適切な遠用メガネをも使いこなす必要があります。https://meisha.info/archives/3607
しかし理解不足のためメガネをうまく使いこなせていない高齢者は少なくありません。
さらにそのような高齢者に対して、遠用や近用メガネ、さらには累進メガネhttps://meisha.info/archives/374の正しい使用法をわかりやすく説明できている眼科医は必ずしも多くないと感じます。
その原因として、経験の浅い若い眼科医のメガネに対する知識不足が挙げられます。
近年の眼科診断、治療テクノロジーの進歩は著しく、卒後臨床研修を終えて大学病院眼科で専門医研修を行う若い眼科医には、多くの眼科検査や治療手技の習得が必要です。
その中に以前はメガネ処方の教育も含まれていましたが、最近では視能訓練士ORT: orthoptistがメガネ処方をする施設が多いため、メガネ処方に不慣れな若い眼科医が増えています。
メガネ処方の経験がないと、メガネの不都合を訴える患者さんに、適切なアドバイスができません。
メガネ処方の経験を積むには、まずは自分で処方するくせをつけることです。
処方したメガネ不具合のクレームを恐れて処方をためらう傾向がありますが、メガネ処方の難易度はさまざまです。
最初は難易度の低い表のケースを選んで処方するのが無難です。
1. 軽度近視の小児のメガネ:近視の小児に対して、四六時中メガネを常用するよう指導する眼科医もいますが、最初は授業中だけ使うよう私は指導します。
理由は近視メガネをかけたまま長時間読書をすると調節ラグが生じやすく、近視を進行させるリスクがあるからです。https://meisha.info/archives/2355
乱視が軽度でかつ、過矯正なしに両眼の遠見矯正視力が1.0あれば、これを授業中だけかけるよう指導すれば処方トラブルになることはあまりありません。
2. 高齢者の近用専用メガネ:もう一つのおすすめはメガネ未経験の正視あるいは軽度遠視の高齢者に初めて処方する近用メガネです。
こちらは調節余力を考慮して弱めの度数で両眼の近見矯正視力が0.6程度以上でるように処方すれば、使用するのは近業時だけなのでやはり問題になることはありません。
そのようなメガネ処方の経験を積んで慣れてくれば、表のような高難度のメガネ処方にもチャレンジできて、他院で処方されたメガネのトラブルを訴える患者さんにも適切に対応できるでしょう。