網膜剥離は内境界膜 ILM: internal limiting membraneから視細胞までの神経網膜が、下層の網膜色素上皮RPEから剥がれる病態です。https://meisha.info/archives/856
これに対して網膜分離は神経網膜が亀裂によって内外2層にスプリットする状態です。
周辺網膜の加齢変化であるmicrocystoid degenerationの嚢胞腔が癒合して網膜分離を生じることが病理学的に示されています。
Hogan MJ, Zimmerman LE. Ophthalmic Pathology An tlas and textbook 2nd Ed: W.B. Saunders. p551, 1962
OCTでみられる神経網膜内の層間分離も網膜分離とされますが、層間には通常垂直方向の柱状pillar構造が観察されます。
代表的なものに遺伝性のX連鎖性若年網膜分離症XLRS https://meisha.info/archives/4017と近視性網膜分離症があり、後者は病的近視に含まれる近視性牽引黄斑症 MTMの主要な病態です。https://meisha.info/archives/4077
しかし網膜内でのスプリットの首座は、XLRSでは通常内顆粒層(図左)ですが、近視性網膜分離では外網状層(図右)です。
図左は30歳男性XLRSの右眼で矯正視力は0.5です。
図右は79歳女性、屈折度数-7.5Dの左眼で、内層分層黄斑円孔を伴うため矯正視力は0.4です。
近視性網膜分離のみでは矯正視力の低下はないかわずかですが、網膜分離の進行に伴って内層分層黄斑円孔(上図右)、外層分層黄斑円孔(下図左)、黄斑剥離(下図左)、全層黄斑円孔(下図右)、黄斑円孔網膜剥離などの合併症を生じると不可逆性に矯正視力が低下します。
島田典明: 近視性牽引黄斑症、TMDU分類 臨床眼科 76:590-3.2022
下図左では内境界膜剥離に伴う網膜内層分離もみられます。
大野京子, 高橋洋如: 病的近視をOCTでどう診るか 日本の眼科 93:748-55.2022