• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

進行性の視機能障害を示す白点状眼底

網膜色素変性https://meisha.info/archives/726夜盲を訴える病気の代表で、進行すると失明に至ることもある遺伝病です。

(広義)先天停在性夜盲

一方、視機能の障害が非進行性の夜盲症として(広義)先天停在性夜盲が知られていて、小口病https://meisha.info/archives/4345白点状眼底https://meisha.info/archives/1873狭義の先天停在性夜盲(完全型と不全型)が含まれます。
近藤峰生:(眼科臨床エキスパート) 網膜変性疾患診療のすべて、医学書院.253-258. 2016

非進行性(停止性)の見直し

しかし非進行性(停止性)と考えられてきた広義先天停在性夜盲のうち、SAG遺伝子(アレスチン遺伝子)異常を示す小口病の一部は、中高年になり進行性の網膜色素変性に移行することが最近になり明らかになりました。https://meisha.info/archives/4345
同様にRDH5遺伝子変異による白点状眼底についても、非進行性であることを見直すべきケースのあることが報告されています。
Nakamura M et al.: A high association with cone dystrophy in Fundus albipunctatus caused by mutations of the RDH5 gene. Invest Ophthalmol Vis Sci 41:3925-32.2000

症例

幼小児期から夜盲の自覚のあったAさん(女性)は、30歳頃から羞明も自覚するようになり、34歳、人間ドックで眼底の異常を指摘されました。
下図左端は左眼の白内障によるかすみを自覚して大学病院の眼科を紹介された時の右眼で、両眼対称性に細かい無数の白点が眼底全体にみられましたが、黄斑部は明らかな異常なしです
ERGでは小さいa波のみが記録されて白点状眼底と診断されました。

錐体ジストロフィ類似のbull’s eye変化

その後、両眼の白内障手術を受けて、矯正視力は1.0/1.0に回復しましたが、60歳頃から両眼の傍中心暗点を自覚するようになりました。
65歳時の右眼底写真では白点はやや不明瞭となりましたが、代わりに中心窩周囲にbull’s eye様の輪状の色素脱失が出現しました(図中央矢印)。
対応するOCTのEZラインは消失2本の矢印の間)して視細胞萎縮を示しています。
30-2視野では上方に偏心した比較暗点図右)がみられ、10-2視野では輪状暗点でした。
高齢になって錐体ジストロフィ様の進行を生じた白点状眼底と考えられました。
佐藤進, 飯島裕幸: 錐体機能異常を伴った眼底白点症の1例. 臨床眼科 41:1307-11.1987