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主訴:視力低下

以前の紙カルテであっても現在の電子カルテであっても、病歴記載は[主訴]で始まります。
主要な国語辞典で[主訴とは、患者が医者に申し立てる症状のうちの主要なもの]と説明されています。

主訴:視力低下

眼科の病歴や学術雑誌の症例報告の主訴として記載されることが多い表現に[視力低下]があります。

筆者の個人的な意見ですが、[視力低下]は視力検査での測定値である[視力値]の減少であって、患者さんが訴える症状ではないと考えています。
健康診断で測定された視力が0.5しかなくてそれが心配で眼科を受診する患者さんもいますが、その場合、患者さん本人の[見え方の不調]がほかになければ、主訴としては[視力検査結果に対する不安]と記載するのが妥当でしょう。(そのような場合、適切な矯正レンズで再測定すると正常の矯正視力であることも少なくありません。)

英語での主訴

英語論文のcase reportでは以下のように霧視 (blurry vision or blurred vision) https://meisha.info/archives/331中心暗点 (central scotoma) https://meisha.info/archives/1973など具体的な症状で記載されています。
症状の具体的な記述が困難な場合は視覚障害 (visual disturbance)と記載されることがありますが、その場合は日本語の主訴としては[見えにくさ]と記載するのがよいと思います。
視力低下に近い英語としてdiminution of visionという記載もみられますが、おそらく[見え方の悪化]というニュアンスでしょうか?

“A 47-year-old man was referred… for blurry vision in his left eye”
“A 24-year-old man presented with the sudden onset of a central gray scotoma OS.”
”A 40-yera-old man presented with sudden right visual disturbance
“A 15-year-old boy came to our hospital with gradual diminution of vision and night blindness in both eyes since 5 years.”

筆者が考える適切な主訴:霧視、かすみ、ぼやけなど

見え方の不調を訴える患者さんを視力検査して、矯正視力が低下している場合[主訴:視力低下]と記載することが多いと思われますが、詳しく患者さんに尋ねて、[霧視][目のかすみ][ぼやけ][見えにくさ][中心暗点][近方視困難]などの表現を使うのがよいのではないかと思います。https://meisha.info/archives/3064