• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

抗コリン薬禁忌と緑内障連絡カード

抗コリン薬による急性緑内障発作

原発閉塞隅角緑内障 PACGや、その前段階で視神経乳頭にまだ緑内障の変化がみられていない原発閉塞隅角症PACでは、前房が浅く(浅前房)隅角が狭い(狭隅角)ため、散瞳すると眼圧が急上昇する急性緑内障発作のリスクがあります。https://meisha.info/archives/826
そのため散瞳作用のある抗コリン薬は禁忌とされています。https://meisha.info/archives/452

散瞳しても眼圧上昇しない緑内障眼

しかしこのような目でも白内障手術によって眼内レンズが挿入される、あるいは虹彩に穴をあけるレーザー虹彩切開術https://meisha.info/archives/2058が行われると、散瞳しても通常眼圧は上昇しません。
また緑内障の多数派である開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障NTGや原発開放隅角緑内障POAG)では、散瞳によって眼圧が上昇することはありません。
したがって抗コリン薬が禁忌となるのは緑内障患者さんの一部にすぎません。

緑内障連絡カード

そこで眼科以外の医師や薬剤師に、抗コリン薬投与を控えるべき緑内障患者さんを正しく伝える目的で、2020年に日本眼科医会は緑内障連絡カードを作成しました。
しかし記載がわかりにくかったので、2023年6月に図のような改訂版を作成しました。

緑内障連絡カードの中身

カード内面の上段ではにチェック を入れることで患者情報を提供します。
下段では抗コリン薬投与が想定される対象疾患を示しています。

3パターンの患者情報

伝えるべき患者情報は3つのパターンに分かれます。
A急性緑内障発作を起こすリスクがほとんどない開放隅角で投薬は問題ありません。
閉塞隅角の病型であっても、すでに虹彩切開または白内障手術がされているBのケースでは投薬は問題ありません。
閉塞隅角と診断されたがまだ虹彩切開や白内障手術を行っていないCのケースでは、[(抗コリン薬の)使用をお控えください]というメッセージになっています。
Cには閉塞隅角を生じるリスクが PAC ほどではない[原発閉塞隅角症疑い]の PACS: PAC suspectも含まれます。

緑内障連絡カードの運用方法は裏表紙のQRコードで示されるYouTube動画でも解説されています。https://www.youtube.com/watch?v=uFLXsDreGv4