• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

感染性ぶどう膜炎とステロイド

感染性ぶどう膜炎の病原微生物

ぶどう膜炎診療ガイドラインhttps://meisha.info/archives/4717の各論では、本邦でよく経験される感染性ぶどう膜炎、9疾患が解説されています。
原因となる病原微生物は表のように分類されます(数字はガイドラインに登場する番号)。

感染性ぶどう膜炎の治療

原因となった病原微生物(細菌、真菌、ウィルス、原虫)の増殖を抑える抗菌薬、抗真菌薬、抗ウィルス薬などの全身投与が原則です。
先のガイドラインでは感染性ぶどう膜炎の9疾患のうち、HTLV-1関連ぶどう膜炎(HAU)と眼トキソカラ症を除いて、抗病原微生物薬の全身投与が治療の原則として記載されています。

ステロイド薬

一方、ぶどう膜炎では眼内の炎症を抑える目的で、抗炎症薬であるステロイドも使用されます。
その使用法は表のごとく病変部位に応じて異なります。

全身投与ステロイド

このうちステロイドの全身投与は生体の免疫機能を抑制して病原微生物の増殖を助長するため、投与はは通常控えることになっています。
ただし、炎症が重篤で視神経や黄斑に不可逆的な視機能障害を来す場合は、例外的にステロイド全身投与を行います。
その場合でもステロイド投与前に抗微生物療法を先行して行うべきとされています。
大野重昭,他: ぶどう膜炎診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:635-96.2019
たとえば硝子体混濁が強い眼トキソプラズマ症ではまず抗菌薬https://meisha.info/archives/1070を投与した後、ステロイド内服を注意深く開始します。
慶野博: 感染性ぶどう膜炎(梅毒、結核, トキソプラズマ)眼科 61:1094-100.2019
細菌や真菌の全身感染は、表の血液検査でチェックできます。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 2-3-1024x396.png

IGRA Interferon Gamma Release Assay:インターフェロンγ遊離試験
QFT-4G:クォンティフェロン® TBゴールドプラス
https://www.kekkaku.gr.jp/pub/pdf/Interferon-gamma_release_test.pdf
TPHA Treponema pallidum hemagglutination test:梅毒トレポネーマ抗体検査
RPR rapid plasma reagin:抗原にカルジオリピンを用いた非特異的な梅毒検査法 (STS: Serological test for syphilis) https://www.kansensho.or.jp/ref/d52.html

ステロイドテノン嚢下注射と点眼

感染性ぶどう膜炎に対して後部テノン嚢下注射を施行した場合、炎症所見の急激な増悪を生じる恐れがあるとされています。
大野重昭,他: ぶどう膜炎診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:635-96.2019
またHSVやVZVによるヘルペス性虹彩毛様体炎で、樹枝状角膜炎https://meisha.info/archives/169や偽樹枝状角膜炎など角膜上皮病変がみられればステロイド点眼も控えます。