• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

[遠視+老視]VS[軽症白内障]

[最近見えにくくなった]と訴えて眼科を受診する高齢の患者さんの多くは、白内障か老視(老眼)が原因です。
TVと新聞のどちらが見えにくい?]という質問で両者を鑑別できると以前解説しました。https://meisha.info/archives/48
ところが遠視の高齢者では、調節力が減退する老視で固定焦点になると、TV画面も裸眼ではぼやけて見えにくくなります。https://meisha.info/archives/2347
その際、白内障もあれば、見えにくさの主因がメガネで解決する[遠視+老視]なのか、あるいは手術が必要な[白内障]なのか、判断は容易ではありません。

症例

RV = 0.3 (0.7 X S+4.0D: C-2.25D A90)
LV = 0.2 (0.7 X S+2.75D: C-1.75D A90))
徐々に見え辛くなったという上記視力の88歳の女性が近医眼科を受診、白内障手術を勧められ、高齢のため日帰り手術ではなく入院での手術を希望したため大学を紹介されました。
メガネは新聞を読む際の老眼鏡以外には所持していません。

細隙灯顕微鏡所見と試し掛けメガネ

散瞳して細隙灯顕微鏡で観察しましたが白内障の濁りはそれほどではありません。

散瞳されていましたが、出来合いの+2.5Dの老眼鏡をためしに掛けてもらうと、壁の時計とカレンダーがよく見えるといって感激されました。
そこで白内障手術は予定せず普段常用する遠用メガネを処方する方針としました。
白内障手術を勧められた紹介元の眼科ではメガネの説明はされなかったとのことです。

屈折矯正目的の白内障手術

最強度近視では白内障がほとんどなくてもPEA/IOLで軽度の近視にできれば、患者さんのQOVは大きく改善します。https://meisha.info/archives/3641
遠視の高齢者にはメガネを掛けたがらないひとが多いhttps://meisha.info/archives/3607ので、白内障手術によって良好な遠見視力が裸眼で得られるなら、混濁が軽度でも白内障手術が有意義となる場合はあります。
ただし上記の高齢女性はメガネで目の手術を回避できることを知って大いに喜ばれました。