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VZV前部ぶどう膜炎の治療

帯状疱疹ウィルスVZVによって起こる前部ぶどう膜炎 VZV-AUは、図のような色素沈着を伴う豚脂様角膜裏面沈着物mutton fat KPs高眼圧を特徴とする虹彩毛様体炎です。

鼻背や鼻尖部の皮疹(Hutchinson徴候https://meisha.info/archives/4676)を伴う帯状疱疹患者さんでの診断は容易ですが、皮疹を欠く患者の前房内炎症であっても、前房水 PCR 検査でVZV-DNAが検出されれば診断されます。https://meisha.info/archives/4743

VZV-AUの治療

VZV-AUは感染性ぶどう膜炎なので、抗ウィルス薬の投与が必要で、https://meisha.info/archives/4725これに加えて前房内炎症と高眼圧に対してステロイド薬、眼圧降下薬が用いられます。
全身および局所投与にて、表のような薬剤が用いられます。

ぶどう膜炎診療ガイドライン日本眼科学会雑誌 123:635-96.2019)にはバラシクロビル(腸吸収を改善したアシクロビル類似製剤)内服とステロイド点眼、それに眼圧降下薬の点眼内服が記載されています。
一方、2021年に発表された11施設259例のヘルペス性AUが対象の日本での多施設共同研究では、バラシクロビル内服とステロイド点眼以外に、82例のVZV-AUの半数以上でアシクロビル眼軟膏が使用されていました。
Terada Y et al.: Distinguishing Features of Anterior Uveitis Caused by Herpes Simplex Virus, Varicella-Zoster Virus, and Cytomegalovirus. Am J Ophthalmol 227:191-200.2021

アシクロビル眼軟膏

アシクロビルは核酸類似体で、増殖時のウィルスDNA末端に取り込まれると、DNA鎖の伸長をストップさせてウィルス増殖を阻止します。
アシクロビル眼軟膏(ゾビラックス眼軟膏)はHSVによる樹枝状角膜炎https://meisha.info/archives/169の第一選択薬ですが、アシクロビル自体はHSV、VZVに起因する感染症に適応があります。

VZV-AUでのアシクロビル眼軟膏の奏功機序

結膜嚢内に点入されたアシクロビルは角膜上皮細胞に取り込まれた後、前房内に移行します。
前房内での濃度が抗ウィルス薬としての治療量に達することは、ヒト白内障眼で確認されています。
Poirier RH et al: Intraocular antiviral penetration. Arch Ophthalmol 100:1964-7.1982
VZV-AUの場合、VZVが増殖しているのは虹彩や隅角線維柱帯の細胞(色素上皮細胞、実質細胞、平滑筋細胞など)で、そこでのウィルス増殖を阻止していると考えられます。