[目の痒み]すなわち掻痒感を訴える患者さんを診るときは、痒みが目の玉(眼球)の表面なのか、またはまぶたの皮膚なのかをまず確認します。https://meisha.info/archives/1184
前者の多くはアレルギー性結膜疾患ACD: Allergic conjunctival diseaseで、後者は眼瞼皮膚の接触皮膚炎のことが多いです。
具体的には痒い側のまぶたの皮膚をつまんで、その表面の痒みなのか、それともその裏側の眼瞼結膜や眼球結膜の痒みなのかを確認します。
ACDは図のように分類され、有病率はSAC>PAC>AKC>VKC>GPCの順になります。
SAC、PACは季節性発症の有無で区別されます。ともに非増殖性で軽度の結膜充血と浮腫以外に特徴的な他覚所見はなく、痒みの症状が診断の決め手です。
AKCは目以外にアトピー性皮膚炎を合併するものです。
VKCは増殖性変化を示すので、角膜輪部のTrantas斑に注意するとともに上眼瞼を翻転して乳頭増殖の有無を確認します。シールド潰瘍や角膜プラークなどの角膜病変がみられることがあります。
GPCはコンタクトレンズ、義眼、手術用縫合糸などの原因によって、眼瞼結膜に増殖性変化を生じるものです。
日本眼科アレルギー学会診療ガイドライン作成委員会、委員長、宮崎大: アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版). 日眼会誌 125:741-85.2021
抗アレルギー点眼薬が第一選択で適宜ステロイド点眼薬を追加します。https://meisha.info/archives/844
VKCでは症状が強くこれでおさまらない場合があり、その際は免疫抑制点眼薬を使用し、https://meisha.info/archives/2083さらに重症例ではステロイド内服、眼瞼結膜下注射、外科的治療(乳頭切除)を検討します。
GPCでは原因の除去の上、抗アレルギー点眼薬とステロイド点眼薬を使用します。
ウルシやイラクサなどに含まれる化学物質によって生じる刺激性接触皮膚炎もありますが、眼瞼皮膚の接触皮膚炎の多くはアレルギー性です。
原因として点眼薬、眼軟膏、花粉、手に付着したアレルゲン、化粧品などがあります。
接触皮膚炎診療ガイドライン 2020. 日皮会誌 130:523-67.2020
発症経過や使用薬、化粧品などの聴取で原因を特定して、それを避けることが治療になります。
ネオメドロールEE眼軟膏に含まれる硫酸フラジオマイシンが眼瞼皮膚の接触皮膚炎の原因になることは有名です。https://meisha.info/archives/2109
またグラナテック、ブリモニジン、βブロッカーなどの緑内障点眼薬も接触眼瞼皮膚炎を生じることが多いです。https://meisha.info/archives/2514
庄司純: 点眼薬関連アレルギー. 日本の眼科 87:849-53.2016