[まぶしさ]は眼科を受診する患者さんの訴えのひとつで、医学的には羞明(しゅうめい): photophobiaと呼ばれます。
photoは[光]、phobiaは[嫌う]あるいは[恐怖症]の意味で、光のまぶしさを恐れ嫌う症状です。
もちろん正常者であっても太陽の光はまぶしく、暗い部屋でいきなり明るい照明を点灯されるとまぶしいと感じます。
しかし周囲の人がサングラスなしで過ごせる通常の環境にもかかわらず、まぶしさのために目を細めたりつぶったりするのは病的です。
[まぶしさ]には眼球自体が異常の場合と、目以外の原因による場合があります。
松原央: 羞明. 眼科 60:1021-4.2018
眼球に起因するまぶしさの原因とその機序を表に示します。
さざ波の立つ水面は光の散乱でキラキラして、同じ光量でもまぶしく感じます。
小児に多い睫毛内反https://meisha.info/archives/589では角膜を突っつく睫毛によって生じる点状表層角膜症https://meisha.info/archives/608によって光が散乱されるため、患児は屋外でまぶしそうにします。
先天緑内障でも、角膜浮腫のため同様に光が散乱されてまぶしがります。
初期の白内障患者さんの[まぶしさ]は混濁した水晶体での光の散乱のためです。
図の青色矢印が散乱された光を示します。
虹彩は瞳孔径の変化で眼球内に入射する光量を調節しています。
眼底検査のために散瞳剤を点眼すると、縮瞳による光量調節ができず晴れた屋外では大量の光が眼内に入り、まぶしさのため運転が困難になります。
瞳孔括約筋が麻痺する瞳孔緊張症でも同様です。
皮膚白子症 OCA https://meisha.info/archives/2772では遮光色素であるメラニンの合成が障害されるために、メラニン色素が欠如した虹彩や脈絡膜を通って眼内に入る過剰の光量で[まぶしさ]を訴えます。
視細胞のうち暗所で微弱な光を感知する杆体は強い光を浴びると[まぶしさ]を生じます。
しかし明所では錐体からの信号によって杆体機能が抑制されているため、まぶしくはありません。
ただし錐体が失われる先天性疾患である杆体一色覚や、後天性疾患である錐体ジストロフィでは、この錐体からの抑制機構が働かないために、明所で過剰な光にさらされた杆体によって[まぶしさ]を訴えます。
眼球に異常がなくて[まぶしさ]を訴える病態のうち、眼瞼けいれんhttps://meisha.info/archives/602は瞬目の制御異常による開瞼困難が主な症状ですが、同時に[まぶしさ]も訴えます。
また片頭痛では光や音、臭いなどの知覚刺激に敏感になるため[まぶしさ]を訴えます。
原直人: 片頭痛の眼科臨床と視機能異常. 日本の眼科 86:1565-72.2015
いずれも[まぶしさ]は内因性光感受性網膜神経節細胞 ipRGC https://meisha.info/archives/2071(メラノプシン神経節細胞)を通じて生じると考えられています。
Katz BJ, Digre KB: Diagnosis, pathophysiology, and treatment of photophobia. Surv Ophthalmol 61:466-77.2016