• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

飛蚊症による見えにくさ

白内障に間違われる[見えにくさ]

大学病院には多くの患者さんが白内障の手術目的で紹介されてきます。
しかし[患者さんの見えにくさの主因が本当に白内障なのか]を判断するのは簡単ではありません。https://meisha.info/archives/1001
見えにくい原因が実は白内障ではなくたとえば老視で、手術ではなく近用メガネの処方で解決したという事例も散見されます。https://meisha.info/archives/48
老視以外にも黄斑円孔https://meisha.info/archives/236などの黄斑病変や、中心視野が最初に障害された特殊な緑内障https://meisha.info/archives/523だったということもあります。
最近、飛蚊症が主因だった白内障手術紹介患者さんを経験しました。

症例:85歳男性

患者Fさんの左の視力は視神経委縮のために0.1と不良で右目が頼りでしたが、[その右目で最近、字が見えにくくなった]ということで白内障手術目的に紹介されました。
右目の視力は裸眼0.3、矯正0.6 (+1.75D: cyl -2.0 Ax90)で85歳としてはそれほど悪くありません。
水晶体の前部皮質に限局する濁りはみられますが、瞳孔中心をはずれていました。(図左
老視のためかとも思いましたが[新聞の文字だけでなくTVの文字も見えにくい]と言います。
視力検査での矯正下でも[視力表の場所によって見えるところと見えないところがある]と言います。
超広角眼底カメラのオプトスhttps://meisha.info/archives/3081で撮影したところ、視神経乳頭付近に比較的濃い濁りが写っていて、後部硝子体剥離によるワイス環 (Weiss ring or glial ring) https://meisha.info/archives/446と考えられました。
また黄斑部をカバーする比較的大きな硝子体混濁もみられました。(図中央、右

飛蚊症の硝子体混濁が邪魔する見えにくさ

患者さんに再度尋ねると[見えない部分が動いて、それが新聞の文字の列の一部にかかると見えなくなる]と言います。
網膜に近いワイス環が動いて中心窩にかかったり、硝子体中央の大きな混濁が邪魔したりして見えにくくなると考えられました。
白内障手術ではこれらの濁りはとれず根本治療は硝子体手術ですが、剥離した硝子体膜の収縮に伴い混濁部が網膜から離れていけば、今より見やすくなる可能性を説明して、しばらくは経過をみてもらうことにしました。