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ヘスチャートの読み方 3:両眼性障害

複視の原因が片眼性で単筋の障害であれば、ヘスチャートの[田の四角]が小さい眼の結果から障害筋を同定https://meisha.info/archives/4863することが可能です。
木村亜紀子: Hess赤緑試験. 眼科検査ガイド第3版. 163-166, 2022.
しかし両眼性の眼球運動障害例では、ヘスチャートの結果から障害筋を診断するのは困難です。

両眼性眼球運動障害

両眼性の眼球運動障害は以下のような疾病でみられます。
(脳の病変)
肥厚性硬膜炎に伴う眼球運動障害https://meisha.info/archives/2794
(神経病変)
フィッシャー症候群
(神経筋接合部病変)
重症筋無力症https://meisha.info/archives/2274
(外眼筋の障害)
甲状腺眼症https://meisha.info/archives/423
sagging eye 症候群https://meisha.info/archives/2663
筋強直性(緊張性)ジストロフィhttps://meisha.info/archives/4811
慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)https://meisha.info/archives/1591
両眼性先天性上斜筋麻痺
両眼性特発性外眼筋炎

重症筋無力症のヘスチャート

重症筋無力症では眼瞼下垂だけでなく、両眼の外眼筋が不規則に障害されます。
図左のヘスチャートは右眼の動眼神経麻痺https://meisha.info/archives/1407に近いパターンですが、抗AchR抗体陽性の重症筋無力症でした。

甲状腺眼症のヘスチャート

甲状腺眼症では両眼の各外眼筋に種々の異なる程度の炎症が生じ、その結果不均一な筋の伸展障害によって複雑なパターンの複視を生じます。
図のケースでは図右の冠状断MRIにみられるように右の上直筋と左の下直筋の炎症が特に強く、そのため右眼の下転障害と左眼の上転障害が目立つヘスチャートになっています。